3月31日(日)、『ボノボの里Mbali』オフ会6回目を開催しました。UAPACAA理事の松浦直毅さんに最終回を担当していただきました。 ◯スピーカーの紹介 椙山女学園大学准教授。中部アフリカを中心に狩猟採集民の人類学的な調査、熱帯林の生物多様性保全と持続的開発に関する研究を行ってきた。 前回、前々回に続いて、ボノボ研究で有名なワンバ村が舞台です。陸路での移動が大変なこの地域では人々はどうやって交易をするのでしょうか? 2017年に行った「水上輸送プロジェクト」についての紹介です。 ◯森の商品を街で売りたい! 住民の生活を向上させるためには、やはり現金収入アップが必要。しかし、より高値で物が売れる州都バンダカは800kmも離れており、交通手段は非常に限られています… そんな中、陸上運送ルートの問題を解決する支援活動であるとともに、資源利用や交易の実態を調べるための研究活動でもある、「水上輸送プロジェクト」が発案されました。
することができないので、公平性を保つため、一律バンダカの相場価格で前払い ④商品を船に載せて街へ出発:しばしの水上生活。意外にも船内は広々していて寝床や調理、家畜のスペースも十分だったそうです。 ⑤出発から1週間後バンダカに到着:到着するや否や、商人たちがどんどん商品を買い上げ、5日間で完売! ◯前進あるのみ 集めた商品は全て販売し、売り上げも相当な額でした。一方で、船代やガソリン代に膨大な費用がかかってしまいました。 その後、住民の経済活動も活発になりかけていましたが…コロナの影響で、フォローアップができない状態となりました。 そして現在、50年以上研究が続くこの地で、国内情勢や住民の需要に合わせた、新たなプロジェクトを構想しているそうです。研究者の野心は尽きません!
こちらの「コンゴ民主共和国ボノボの里Mbaliを語るオフ会」は、今回で最後…! 代表岡安のゴリラ孤児院から始まり、中村美穂さんのMbali地区への船旅、金山麻美さんによるタンザニアのチンパンジーエコツアー、同じくDRCのボノボの生息地であるワンバ地域については、木村大治さん、山口亮太さん、そして松浦直毅さんに、野生動物と共生する人々の暮らしについて紹介していただきました。 全6回のあいだ、それぞれの専門分野からの視点で、中部〜東アフリカに生息する大型類人猿とゆかりの地について、深く、楽しく、勉強することができました! ファシリテーターのみなさまはもちろん、オフ会に参加してくださったみなさま、こちらの記事をご覧になったみなさま、ありがとうございました!!
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3月17日(日)に『ボノボの里Mbali』オフ会第5回を開催しました! 木村大治さんに続き、今回は人類学的研究をされている山口亮太さんが担当です。希少なボノボ研究地域であるDRCのMbaliとWamba、2つの地域を比較しながら、ワンバ地域での生活について語りました。 ◯スピーカーの紹介 文化人類学を専門とし、中部アフリカを中心に地域住民の信仰、生業、そして自然環境の関わりについて研究をしてきた。以前UAPACAAアシスタントとしてボノボの里を訪問。(過去の記事はこちら) ◯ワンバ地域へ行く 陸路ではアクセスが難しいため、セスナを利用して移動します!キンシャサから北東に1000kmほど進むと…一面に緑の平地が広がり、目的地が熱帯ジャングルの真ん中に位置しているのが見えます。ワンバ地域のルオー学術保護区では現在まで40年間、ボノボの研究が継続されてきたそうです。 ここからやっと調理! キャッサバを杵で丁寧に潰して、太い棒状に成形します。これを丈夫で撥水性のある葉(クズウコン科マランタセイ)で包み、蒸し焼きにして完成!こちらは「クワンガ」と呼ばれ、DRC全体のみならず、カメルーンでも一般的な主食です。 発酵した独特の香りと、キャッサバでん粉のもちもちした弾力が何ともクセになります。 ◯キャッサバを飲む 食べるだけじゃない!キャッサバは自家製の蒸留酒「ロトコ」の原料として、地元の人々に親しまれています。トウモロコシによるアルコール発酵を利用して作ったお酒は、透き通っていて、細かい泡が立つほど良い出来なのだそう。 そして…こちらのオフ会は最終回を迎えます! UAPACAA理事の松浦直毅さんに、コンゴ河と河を通した都市と地域の繋がりについて解説していただきます。 3月31日(日)20時〜 開催予定です!お気軽にご参加ください。 お申し込みはメール、または、画面右下のアイコン(メッセンジャー)からも可能です! 3月10日(日)、人類学者の木村大治さんを発表者に迎え『ボノボの里Mbali』オフ会第4回を開催しました! 第1回〜3回までは類人猿に関するトピックが中心でした。今回は趣向を変え、コンゴ民主共和国(DRC)で野生動物とともに暮らす人々の、「もののやり取り」について紹介していただきました! ◯スピーカーの紹介 京都大学名誉教授。DRCとカメルーンを中心に言語や相互行為に関する人類学的研究をおこなう。1986年から4年間DRCで調査をしたが、90年代、コンゴ紛争の影響で「調査難民」を経験する。その後2005年に調査を再開した。 ◯リンガラ語 DRCを中心とした中部アフリカ諸国の複数地域で使用されている地域共通語で、DRCでは北西部、キンシャサで話されています。 ところで、この言語には「ありがとう」や「ごめんなさい」という語彙が存在しません。 では、コンゴの人々はどのように感謝の気持ちや謝罪を伝えるのでしょう。 ◯平準化システム 話は婚姻制度におよびます。ボンガンドの社会では、夫が妻方の親族に対して生涯婚資の支払い義務が課せられます。それは相当な金額であり、一方的な負担を強いられているように見えますが、夫方の親族集団も同じように、違う親族集団から婚資を受け取っているのであり、家族同士の不均等をなくす仕組みが働いています。 木村さん自らの経験したことや疑問から、スムーズに学術的な議論へと論を進めてくださり、普段とは違う切り口でDRCへの理解と興味が深まりました。
木村大治さん、ありがとうございました!! そして、このオフ会も残すところあと2回! 次回の内容は…今回発表予定だった元UAPACAAアシスタントの山口さんに、DRCのMbali地区やワンバ村のお話をしていただきます。 3月17日(日)20時〜 開催予定です!お気軽にご参加ください。 お申し込みはメール、または、画面右下のアイコン(メッセンジャー)からも可能です! 2月25日(日)に『ボノボの里Mbali』オフ会第3回を開催しました! こちらの会では、ボノボの生息地やアフリカ諸国で活動する専門家から、一般の動物好きの方々までゆるく集まり、さまざまな小話を聞くことのできる場となっています。 今回は、タンザニアに滞在されている金山麻美さんをゲストに迎え、現地の観光情報とチンパンジーについて発表していただきました。 ◯スピーカーの紹介:金山麻美さん ダルエスサラームで30年以上生活し、ご夫婦で長年エコツアーをホストしてきました。現在は旅行業の傍ら、ご自分でタンザニアのシェタニアート作品を日本の展示会等で紹介しています。 ◯西部の国立公園 ゴンベ国立公園(広さ 約52平方km) 国内で一番小さな国立公園で、タンガニーカ湖の北側の浜辺にある、急な斜面とそれを取り巻く渓谷にまたがる。生息するチンパンジーの個体数も比較的小規模。 1960年代にイギリスの霊長類学者、ジェーン・グドール博士が野生のチンパンジーの調査を開始し、現在も研究活動が行われている。枝や蔓を使って蟻塚からアリを釣る様子を記録し、チンパンジーの道具の使用が初めて報告される。 マハレ山塊国立公園(広さ約1600平方km) タンガニーカ湖東岸に位置し、湖沿いに特殊な植生を発達させている。推定700頭のチンパンジーが生息。1960年代から京都大学の調査グループが入っており、現在も研究が継続されている。 ちなみに、こちらの国立公園には大規模なチンパンジーのグループが形成されていますが、まとまっていることは稀で、争いを避けるため離合集散を繰り返し、いくつかのサブグループに分かれて過ごすそうです。一方で、ボノボはグループでまとまって移動することが多いです。 金山さんによるツアーのこぼれ話と、UAPACAA代表の岡安、及び前回スピーカーの中村さんからは、チンパンジーに関する学術的な解説もあり、非常に豪華な会となりました。
金山麻美さん、ありがとうございました! 次回の内容は…昨年度UAPACAAでアシスタントをしていて、2023年2月にMbaliを訪問した山口さんを、スピーカーに迎えます。オフ会第2回目、Mbaliへの道中談とはまた違う?コンゴ民主共和国での旅の醍醐味!「ボノボの住む森で生活する人々」のタイトルで、お酒や食事のお話も出てくる予定です。 3月10日(日)20時〜 開催予定です!お気軽にご参加ください。 お申し込みはメールでも、右下にあるメッセンジャー↘️でもどうぞ! UAPACAAでは今年の夏に、ボノボの里を訪ねるエコツアーを予定しています! 今年の1月から3月まで、ツアーの参加説明を兼ねて、現地を知っている方々から、毎回ディープなお話をお聞きし、自由に質問できるオンライン座談会を開催しています。全6回、本日は2月3日に行われた第2回目の様子をご紹介します。 今回は、UAPACAAパートナーズの理事でテレビディレクターでもあり、アフリカ諸国で野生動物を撮影してきた中村美穂さんに、ボノボの里までの道中談をしていただきました。 ○スピーカーの紹介 大学時代に自然人類学(人類進化論)を専攻し、そこからチンパンジーに興味を持ち、アフリカに通うようになりました。現在は、生き物や自然環境をテーマにした映像制作に携わる傍ら、京都大学野生動物研究センターで研究活動もしています。 ○コンゴ、キンシャサからMbaliまでの道のり 2016年に中村さん自身が撮影した貴重な映像を交えながら、詳しくお話しいただきました。 1日目 コンゴ民主共和国、首都。商店が立ち並び、商人や客が行き交う賑やかな道路を車で移動します。Mbaliまでは基本的にボートで向かいます。近郊の港から、「BonoboⅡ」号に乗ってコンゴ河を北上します。この日はひたすら船に揺られながら、撮影の合間に現地の食材を味わっていました。 2日目 Mbaliに向けて、さらに北上していきます。目的地近く、チュンビリの港に着くと、入管局で手続きなど行います。現地の役人は少々厄介なこともあるそうで…詳しくは3月31日のオフ会で、「マタビシ(賄賂)」などについても解説があることでしょう!港からは四輪駆動車で移動し、協働団体のMMT(ボー・モン・トゥール)が運営するゲストハウスに滞在します。 他にも、チンパンジーとボノボの違いについても説明があり、こちらも動画を見ながら楽しく学べる会となりました。
中村美穂さん、ありがとうございました!! 次回の内容は…タンザニアで長年、ツアー会社に関わって来られたゲストが登場し、さらに代表理事が「ゴリラ孤児院」でのボノボとの貴重なエピソードもお話しします。 2月25日(日)開催予定です!お気軽にご参加ください。 🇨🇩🌳コンゴ民主共和国『ボノボの里Mbali』オフ会はじめます🌳🇨🇩元旦から、大変な出来事が続いた年初めでしたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。 被害に遭われたすべての方にお見舞い申し上げるとともに、1日も早く落ち着いた暮らしが取り戻せることをお祈りしております。 世界の状況を見ても、ようやくコロナのパンデミックが終息したのに、あちこちで紛争と国際社会の混乱が深まってしまっています。武力衝突が解決策にとてもならないことは、当たり前ですが歴史が証明しています。目を離さずに諦めずに、声を上げていくことで解決を目指すしかありません。それがUAPACAAパートナーズの活動目的の、野生動物を守ることにも直結する時代がやってきてしまいました。 さて、1960年の独立以来、アフリカの紛争の常に中心に置かれ続けたコンゴ民主共和国の総選挙が、昨年末12月20日に執り行われました。前回、初めて平和裏の政権交代が行われた時のように、延期に次ぐ延期という事態もなく、投票予定日に開始できたのは画期的でしたが、肝心の選挙人名簿や投票箱の準備が追いつかず、多くの地域で2日がかりの投票となったようです。 そのうち大統領選の結果が、1月9日に憲法裁判所から発表され、現職のチセケディ氏が70%以上の得票率で当選しました。対立候補は投票や開票に不正があったとして、選挙無効とやり直しを求めてデモなどを行っていますが、今のところ街は平常だという喜びの声を首都キンシャサの友人から聞きました。 そこでUAPACAAパートナーズでも、今年の夏、現地協働団体のMMT(ボー・モン・トゥール)が募集予定の、ボノボの里を訪ねるエコツアーの参加説明会も兼ねて、興味をお持ちの皆さまとゆる会(オフ会)を立ち上げようという話になりました。「募集があったらぜひ行きたい!」から「いずれ1度は訪れたい」「昔から興味があった動物」など、皆さまの関心も多岐に渡ると思います。とりあえず3月までの間に、オンラインで6回、原則、日曜日の夜2時間ほど、気軽にボノボやMbaliの話題で交流会をします。機会があれば、現地の仲間にも参加してもらいます。 まだもう少し現地の様子を見ながら、MMTと募集開始のタイミングを相談していきますが、それとは別にこんなイベントにいらっしゃいませんか? お待ちしております!
今回は、2月に訪問したコンゴ民主共和国(DRC)の「ボノボの里」Mbali地区についての、取材報告第3弾です。今回は、ボノボの観察についてご報告したいと思います。 出張の際に出会ったボノボたちの動画はこちらから☟ Mbali地区で保全活動をおこなっているNPOボー・モン・トゥール(Mbou Mon Tour:MMT)は、エコツーリズムを盛り上げることによる地域振興を目標の一つとして掲げています。安定した雇用を生み出す企業活動や産業が乏しいこの地域では、住民は自給的な農耕に生活を頼っています。日々の糧には困らないかもしれませんが、教育や医療を受けるにはある程度まとまった現金を工面する必要があります。 そのため、エコツーリズムにより旅行客がやって来るようになれば、地域にお金が入り、ツーリズムを維持するための雇用が生み出されることが期待されています。さらにエコツーリズムからの利益は、MMTによる保全活動を後押しすることにも繋がります。 MMTが掲げるエコツーリズムの目玉となるのは、もちろんボノボです。世界広しといえども、ボノボが生息しているのはDRCの一部だけです。そして、コンゴ広しといえども、野生のボノボを観察することが出来る場所で、普通の旅行客にもアクセスが容易なのは、実はMbali地区しかありません。そのため、MMTは霊長類学者やWWF(世界自然保護基金)DRCと連携しながら、ベースキャンプ近隣のボノボのグループの追跡を行い、個体識別やポピュレーションの推移、そして人づけといった、基礎調査的な活動もおこなってきました。 今回の現地訪問では、MMTのゲストハウスに一番近いNkala村のボノボを見に行くことが出来ました。ボノボは毎日森の中を移動しており、決まった寝床はありません。そのため、思いつきで森に入っても、なかなか彼らと出会うことは出来ません。そこで頼りになるのが、ボノボの追跡を行うトラッカーたちです。現地ではフランス語でピステールと呼ばれる彼らは、ボノボの追跡と観察のスペシャリストです。彼らは、ボノボが地面に残した痕跡を辿り、そして見事に発見することが出来れば、夕暮れまでグループを観察しながら一緒に移動します。日が暮れる頃になると、ボノボたちは樹上にベッドを作り就寝し、朝まで移動しません。トラッカーたちは、ボノボが寝るのを見届けてから、集落へ戻ります。このように、ボノボたちの寝場所を確認しておけば、翌朝、確実にボノボを観察することが出来るのです。 観察の当日は、まだ日も昇らない4時に起床し、簡単な朝食をとって4時50分にMMTのランドクルーザーに乗り込み出発でした。5時15分頃、10キロほど走ったところで下車し草原に入っていきます。遠くにうっすらと森が見えますが、まだまだ真っ暗なので、ヘッドランプの明かりを頼りに進みます。夜露に濡れた草原をかき分けて進むので、カッパやウィンドブレーカーは必須です。 やがて、草原が終わって木々が立て込むようになります。ボノボの棲む森に到着です。しばらく進むと、急に下り坂になり、沢を越えると今度は急な上りです。息を荒くしながら上ると、さらに森の木々も密度を増していき、どんどん歩きづらくなってきます。やがて、先を進むトラッカーたちが足を止めて林冠を見上げ始めました。ボノボたちのベッドに到着です。時間は5時55分でした。下車してから40分程度でボノボのベッドまでたどり着いたことになりますので、今回はラッキーだったかもしれません。 とは言え、林冠からうっすらと見える空は徐々に明るくなってきていますが、木々の根元にいる我々の周りはまだまだ薄暗い状態です。トラッカーたちが、あそこにベッドがあるよと教えてくれるのですが、なかなか見えません。しかし、夜が明けて行くにつれ、ボノボたちも目を覚まし、動きはじめました。数十メートル離れた樹上で、枝の上を軽々と行き交いつつ、たまに立ち止まったり枝に座ったりしながらジッとこちらに顔を向けます。いつもと違う見慣れない人間(私たちのことです)がいるので、彼らも気になっているようです。こちらも思わず、リンガラ語で「こんにちは」という意味の「ボテー!」と声を漏らしてしまいました。やがて、彼らも慣れて興味を失ってしまったのか、こちらにはほとんど興味を示さなくなり、最初のビデオにあるように、忙しく樹上を行き交いながら木の実を食べたり、ビャー!っと鳴いてケンカをはじめたりしました。 そうしたボノボの様子を観察しながら、トラッカーたちがこの森に棲むボノボのグループについて説明してくれます。彼らによると、現在、Nkala村の森に住むボノボはオス5頭、メス3頭、子供3頭の計11頭のグループです。以前はもっと大所帯だったそうですが、人間からうつされたであろうインフルエンザが大流行し、個体数を減らしてしまったそうです。よく人に慣れたグループは、すぐ近くまで寄って観察することが出来ますが、同時にこのような感染症のリスクが出てきてしまいます。ただ、Nkalaのグループは数を減らしてしまったとは言え、幸いなことに3頭の雌がそれぞれ子育ての真っ最中でしたので、これから個体数が戻っていくことも期待できます!
その後も観察を続けていると、夜も明けきった7時頃から、ボノボたちは樹上から地面へと下りはじめました。移動です。もちろん我々も、トラッカーたちを先頭に後を追います。ボノボは入り組んだ下生えの間をすり抜けてヒョイヒョイと進んでいきますが、人間はそうはいきません。藪があれば迂回し、歩きやすいところを通っていくので離される一方です。たまに追いつくと、最後尾のボノボが「おや、まだ追いかけてきてたの?」とばかりにこちらに一瞥をくれますが、もちろん彼らはわれわれを待ってくれません。足を止めることもなく、どんどん先に進んで行ってしまいます。 そのまま、ボノボたちはマランタセ(クズウコン科の高さ2メートルにもなる巨大な草)の群生地に入り込んでしまいました。人間にとっても美味しい総菜になりますが、彼らはこの新芽が大好きなのです。でも(ボノボたちには何ともないのかもしれませんが)人間がこの密生した藪の中を進むのは骨が折れ、しかも観えないところで何時間も食べたり昼寝したり...トラッカーたちのアドバイスに従って、この日は9時頃に観察を切り上げました。 また別の日には、ゲストハウスから歩いて行ける森に、まだ人づけされていないボノボがいるということで、そちらの確認にも行きました。徒歩で30分程度のところにある森で、流石にボノボの観察はかないませんでしたが、真新しいベッドの残骸を発見! 確かにこの森にボノボのグループがいることがわかりました。同行していたMMTのキャンプマネージャーのイノサン氏も手応えを感じたようで、代表の岡安の勧めもあって、この森のボノボたちの人づけを始めるとのことでした。ゲストハウスから徒歩圏内でボノボを観察できるとなれば、ボノボ・エコツアーの魅力がさらに広がります。 今回の現地訪問では、このような今後の展開に繋がる希望も、確かに見ることが出来ました。(山口) 今回も、前回に引き続き2月に訪問したコンゴ民主共和国の「ボノボの里」Mbali地区について、報告したいと思います。 第2弾は、現地で保全活動を行う地元NPOのMbou Mon Tour(MMT)の、ゲストハウスについてです。MMTのベースキャンプは、NPOの主要メンバーであるNkala村から約2キロ離れたところに作られています。ここは、ボノボ・グループを人の存在に慣らしてエコツーリズムを可能にする「人づけ」トラッカーやガイドチームの拠点、村人を対象に環境教育や研修を開催する会場、などさまざまな目的に使われていますが、これから盛り立てていくエコツアーのゲストハウスでもあります。 MMTの代表はNkala村出身のジャン・クリストフさんですが、その繋がりで彼の家族が場所を提供しました。ちなみに、現在のNkala村の村長さんはジャン・クリストフさんのお兄さんです。村長さんは、今回の我々の訪問をとても喜んでくれました。 冒頭のビデオをご覧いただけば分かるように、現在、MMTのゲストハウスには従来からある母屋とキッチン、それから2022年に建設された新しい宿泊棟があります。新しい宿泊棟は各部屋にトイレ、洗面台、そしてシャワーが設置されています。屋外のタンクから水を引いていますので、蛇口をひねればちゃんと水が出ます。また、ソーラーパネルとバッテリーで太陽光発電していますので、夜になれば部屋ごとに電気をつけることも出来ます。 母屋にはサロンがついていて、そこで食事をしたり談笑したりできるようになっています。また、「世界ボノボの日」に現地からお送りした第3回のイベントでもお話ししましたが、衛星通信を利用したインターネット回線が引かれています。そのため、コンゴの奥地であるにもかかわらず、スマホでメールや日本のニュースを確認したり、SNSを見られたりします。すごい時代です。 Mbali地区を訪れる旅行者からすると、デジタル・デトックスという意味では良くないかもしませんが、いざという時の連絡が容易につくという大きなメリットがあります。 ちなみに、MMTはこの衛星通信のシステムを、福祉の一環として近隣の村々にも導入し始めています。 Mbali地区の住民も、前回の報告に出てきたコンゴ河の港チュンビリまで出れば携帯電話網にアクセスできるため、スマホを所持している人は少なくありません。しかし、自分の村にまで電波が届くことは稀なケースです。このように、比較的安価な衛星通信システムが導入されることで、住民たちは地方都市や首都キンシャサなどに住む親戚と連絡が取りやすくなったと喜んでいました。 キッチンでは、MMTの調理チームが美味しいご飯を準備してくれています。22年には、UAPACAAパートナーズからの委託事業の一環として、MMTが主催で旅行者に対する接客講習会が地元の人々を集めて実施され、そこでは料理のメニューや調理法などについても検討されたそうです。 定番のニワトリの煮込みの他にも、地元の川で獲れた川魚、マカヤブという塩蔵魚や燻製魚など、バラエティ豊かで楽しめました。食事については、事前にMMT側に好みなどを伝えておくと、出来る範囲で柔軟に対応してくれそうです。今回も、日本人が来るからとわざわざキンシャサでタイ米を買って準備してくれていました。反対に、もっと地元料理を食べたい!という場合は、旬の野菜や野草を手配してくれます。今回のヒットは、野趣あふれるわらびの煮浸し!! 全体として、ゲストハウスでは非常に快適に過ごすことが出来ました。 次回は、ボノボの観察について書きたいと思います(山口)。 (つづく) 新しい年度が始まりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。山口です。 今回から3回に渡って、先日の第3回オンラインイベントの報告記事では触れなかった、2月のコンゴ民主共和国(DRC)への出張で見聞きしたことを皆さまにご報告したいと思います。 今回の出張先は、これまでにもイベントやこの一連の記事でご紹介してきた、DRC、マイ・ンドンベ州の「ボノボの里」であるMbali地区です。こちらももはやお馴染みとなってきた(?)、現地で保全活動を行っている地元NPO法人のMbou Mon Tour(ボー・モン・トゥール;MMT)とUAPACAAパートナーズが共に実施する、エコツーリズム振興プロジェクトについて現地取材をするのが目的です。 2月6日に日本を出国しパリで一泊、DRCの首都キンシャサに到着したのは7日の日没後でした。約半年ぶりのキンシャサは、相変わらず熱気に満ちあふれていました。実は、預けていたスーツケースがロストしてしまい出だしからトホホな状態だったのですが、人びとのエネルギーで少しは癒やされたように思います。 2月8日は、先着していたUAPACAA代表の岡安と合流し、MMTのキンシャサオフィスに向かいました。代表のジャン・クリストフ氏と経理・総務部長のミシェル氏に挨拶し、今回の取材に同行することになっている副代表のクロード氏、Mbali地区でのゲストハウス管理ディレクターのイノサン氏、MMTが提携しているカメラマンであるベテル氏らと打ち合わせをしました。 2月10日に、いよいよ出発です。コンゴ河のほとりにあるヨットクラブから、Mbali地区の最寄りの港町であるチュンビリに向かいます。今回利用した高速艇は、実際のエコツアーでも用いられるものです。 出港は11時過ぎでした。乗り合わせたのは日本人2名、MMT関係者3名、船員2名の計7名です。映像を見ていただければ分かりますが、ホントに早い!雄大なコンゴ河の水面を、まさに飛ぶように走り抜けていく感じです。帰路にGPSで確認したところ、下りでしたが時速70キロメートル近く出ていました。 コンゴ河は、世界第2位の流域面積を誇る大河です。その流域に広がるコンゴ盆地の熱帯林には、ゴリラやチンパンジー、そしてボノボといった稀少な類人猿を含む多種多様な固有種が生息しています。生物多様性という観点から非常に重要であると同時に、古くから人と物の移動に欠かせない、いわば中部アフリカの大動脈ともいえる役割を果たしてきました。 今回の船旅でも、住民の足であり水上版「長距離バス」であるバリニエが、頻繁に行き交っていました。映像にも出てくるバリニエは木製の大型客船で、数日間かけて河川沿いの町を往復しています。また、タグボートに押されて進む水上版「貨物列車」は、荷物の上に人びとがテントを張って生活しているため、さながら「動く町」と化しています。約10年前、初めて目にしたときには、あまりのスケールに目を疑いました。 こちらは、首都キンシャサと中東部の大都市キサンガニの間を、数ヶ月かけて往復しているものもあります。ちなみに、食料は川沿いで生活している人びとから買うそうです。船が通りかかるのを待ち構えていて、カヌーで売りに来るとか。 我々の利用したMMTのモーターボートは、キンシャサからチュンビリまでを5時間ほどで行ってしまいますし、船内には水も軽食も用意されていましたので、ご安心ください! チュンビリからは、これまたMMTの所有するランドクルーザーで移動…のはずが、ここ数日の雨で、道中の湿地帯にかかる橋が落ちかけているとのことで、バイクタクシーに乗せてもらって、MMTのゲストハウスへ向かいました。 なんだかんだで到着は夜8時になりましたが、用意されていた地元料理がとても美味しく、「あぁ、コンゴに帰ってきたなぁ」と大感激で長旅の疲れも吹き飛びました。 (つづく)
コンゴ民主共和国(DRC)のMbali地区で活動を行うNPO・ボー・モン・トゥール(Mbou Mon Tour:MMT)の代表であるジャン・クリストフ・ボキカ氏が、3月1日、2日にガボン共和国のリーブルヴィルで開催された「One Forest Summit」(*注1)に招待されました。その時の彼の演説「生物多様性はコミュニティが護る!」について、映像と記事で皆さまにご紹介します!!
オリジナルの記事は、以下のアドレスからアクセスできます。 https://pfbc-cbfp.org/actualites-partenaires/Jean-Christophe-Bokika.html ※ なお、翻訳中の丸括弧内の語句は、補足として追加したものです。
One Forest Summitで演説するボキカ氏(内容は下記の記事)
Jean Christophe Bokika、ボノボ保護における伝統的知識の認知度向上を訴える - Environews-rdc (2023年3月7日)
NGO「Mbou-Mon-Tour」の代表であるJC・ボキカは、マクロン(フランス大統領)、サス・ンゲソ(コンゴ共和国大統領)、ボンゴ(ガボン共和国)など様々な国家元首が出席する「One Forest Summit」で発言する機会を得た数少ない人物の一人である。彼の組織は1997年、ボロボ郡(マイ・ドンベ州)のンカラ村出身の、数人の大学幹部有志が語らって設立しました。この地域は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅が危惧されている、大型類人猿ボノボの生息密度が最も高い地域のひとつです。
JC・ボキカは、森とボノボに対するさまざまな脅威に直面した9つの村のコミュニティが、いかにしてコンゴ盆地初のコミュニティ森林の設立を決意し、研究とエコツーリズム推進を展開したかを説明しました。 「地域コミュニティは、森林と生物多様性の偉大な保護者です。現在、コンゴ民主共和国では、法律により地域コミュニティがコミュニティ・フォレストを設立することが認められています。環境省の最新の統計によると、生物多様性の保全に関する要望が70%以上を占めています。一部の人々が考えるように、コミュニティには(森を)破壊するという選択肢もありますが、彼らは生物多様性を保護するためにコミュニティ・フォレストを作るという選択肢を望んだのです」 そして、彼は重要な意思決定に地域コミュニティがより深く関与することについて「プロジェクトの(意思決定の)上流や実行中に地域コミュニティが関与せずに行われる保全活動は、失敗に終わると考えています。地域社会と一緒になって取り組まなければなりません」と訴えました。 また彼は、Mbaliのボノボにまつわるエピソードも紹介しました。「ボノボは、われわれにとって親戚のような存在です。昔話によれば、ボノボは人間とともに暮らしていたのですが、『借金を返す』ことができなかったので、森に逃れることを選んだのです」 そして、彼はこの機会に、世界のリーダーたちの前で、ボノボの保護において伝統的知識をよりよく認識するよう求めました。 「私は、我が国の首相がいらっしゃるこの場をお借りして、キンシャサのわずか300km北に位置しながら、ボノボを保護してきた地域の伝統文化を国家遺産として登録し、将来的には、ルンバ(*注2)と同様に、この地域の伝統文化を世界遺産として登録するよう政府がユネスコに要請することを求めます」 この嘆願は、数時間前に同じ文脈で国連教育科学文化機関(ユネスコ)のAudrey Azoulay事務局長が述べた内容と一致します。 ****翻訳ここまで****
*注1
2021年11月開催のCOP27において、ガボンのアリ・ボンゴ大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領が開催を発表した国際会議。世界の3大熱帯林(アマゾン、コンゴ盆地、東南アジア)に関わる国々の連帯を強化し、気候変動と生物多様性保全に取り組むことを目的としている。 *注2 「コンゴのルンバ」は、アフリカン・ルンバとも呼ばれ、コンゴ民主共和国やコンゴ共和国で楽しまれている。元来それらの地域で伝えられていた音楽とダンスが、奴隷貿易を経て南北アメリカ大陸へ伝播し、ジャズやキューバのルンバの誕生にも影響を与えた。その後、それらの音楽や演奏に用いられる楽器が逆輸入され、コンゴのルンバが花開く。日々の何気ない暮らしの一幕や恋愛から、植民地支配や政治不正などの重いテーマまで広くカバーするリンガラ語の歌詞からは、両コンゴの人びとの生活や価値観をうかがい知ることができる。ただし、メッセージ性の強い歌詞でも、踊れるように軽やかに歌い上げるのがコンゴのルンバの真骨頂。2021年にUNESCOの世界無形文化遺産に認定された。 |