今回は、2月に訪問したコンゴ民主共和国(DRC)の「ボノボの里」Mbali地区についての、取材報告第3弾です。今回は、ボノボの観察についてご報告したいと思います。 出張の際に出会ったボノボたちの動画はこちらから☟ Mbali地区で保全活動をおこなっているNPOボー・モン・トゥール(Mbou Mon Tour:MMT)は、エコツーリズムを盛り上げることによる地域振興を目標の一つとして掲げています。安定した雇用を生み出す企業活動や産業が乏しいこの地域では、住民は自給的な農耕に生活を頼っています。日々の糧には困らないかもしれませんが、教育や医療を受けるにはある程度まとまった現金を工面する必要があります。 そのため、エコツーリズムにより旅行客がやって来るようになれば、地域にお金が入り、ツーリズムを維持するための雇用が生み出されることが期待されています。さらにエコツーリズムからの利益は、MMTによる保全活動を後押しすることにも繋がります。 MMTが掲げるエコツーリズムの目玉となるのは、もちろんボノボです。世界広しといえども、ボノボが生息しているのはDRCの一部だけです。そして、コンゴ広しといえども、野生のボノボを観察することが出来る場所で、普通の旅行客にもアクセスが容易なのは、実はMbali地区しかありません。そのため、MMTは霊長類学者やWWF(世界自然保護基金)DRCと連携しながら、ベースキャンプ近隣のボノボのグループの追跡を行い、個体識別やポピュレーションの推移、そして人づけといった、基礎調査的な活動もおこなってきました。 今回の現地訪問では、MMTのゲストハウスに一番近いNkala村のボノボを見に行くことが出来ました。ボノボは毎日森の中を移動しており、決まった寝床はありません。そのため、思いつきで森に入っても、なかなか彼らと出会うことは出来ません。そこで頼りになるのが、ボノボの追跡を行うトラッカーたちです。現地ではフランス語でピステールと呼ばれる彼らは、ボノボの追跡と観察のスペシャリストです。彼らは、ボノボが地面に残した痕跡を辿り、そして見事に発見することが出来れば、夕暮れまでグループを観察しながら一緒に移動します。日が暮れる頃になると、ボノボたちは樹上にベッドを作り就寝し、朝まで移動しません。トラッカーたちは、ボノボが寝るのを見届けてから、集落へ戻ります。このように、ボノボたちの寝場所を確認しておけば、翌朝、確実にボノボを観察することが出来るのです。 観察の当日は、まだ日も昇らない4時に起床し、簡単な朝食をとって4時50分にMMTのランドクルーザーに乗り込み出発でした。5時15分頃、10キロほど走ったところで下車し草原に入っていきます。遠くにうっすらと森が見えますが、まだまだ真っ暗なので、ヘッドランプの明かりを頼りに進みます。夜露に濡れた草原をかき分けて進むので、カッパやウィンドブレーカーは必須です。 やがて、草原が終わって木々が立て込むようになります。ボノボの棲む森に到着です。しばらく進むと、急に下り坂になり、沢を越えると今度は急な上りです。息を荒くしながら上ると、さらに森の木々も密度を増していき、どんどん歩きづらくなってきます。やがて、先を進むトラッカーたちが足を止めて林冠を見上げ始めました。ボノボたちのベッドに到着です。時間は5時55分でした。下車してから40分程度でボノボのベッドまでたどり着いたことになりますので、今回はラッキーだったかもしれません。 とは言え、林冠からうっすらと見える空は徐々に明るくなってきていますが、木々の根元にいる我々の周りはまだまだ薄暗い状態です。トラッカーたちが、あそこにベッドがあるよと教えてくれるのですが、なかなか見えません。しかし、夜が明けて行くにつれ、ボノボたちも目を覚まし、動きはじめました。数十メートル離れた樹上で、枝の上を軽々と行き交いつつ、たまに立ち止まったり枝に座ったりしながらジッとこちらに顔を向けます。いつもと違う見慣れない人間(私たちのことです)がいるので、彼らも気になっているようです。こちらも思わず、リンガラ語で「こんにちは」という意味の「ボテー!」と声を漏らしてしまいました。やがて、彼らも慣れて興味を失ってしまったのか、こちらにはほとんど興味を示さなくなり、最初のビデオにあるように、忙しく樹上を行き交いながら木の実を食べたり、ビャー!っと鳴いてケンカをはじめたりしました。 そうしたボノボの様子を観察しながら、トラッカーたちがこの森に棲むボノボのグループについて説明してくれます。彼らによると、現在、Nkala村の森に住むボノボはオス5頭、メス3頭、子供3頭の計11頭のグループです。以前はもっと大所帯だったそうですが、人間からうつされたであろうインフルエンザが大流行し、個体数を減らしてしまったそうです。よく人に慣れたグループは、すぐ近くまで寄って観察することが出来ますが、同時にこのような感染症のリスクが出てきてしまいます。ただ、Nkalaのグループは数を減らしてしまったとは言え、幸いなことに3頭の雌がそれぞれ子育ての真っ最中でしたので、これから個体数が戻っていくことも期待できます!
その後も観察を続けていると、夜も明けきった7時頃から、ボノボたちは樹上から地面へと下りはじめました。移動です。もちろん我々も、トラッカーたちを先頭に後を追います。ボノボは入り組んだ下生えの間をすり抜けてヒョイヒョイと進んでいきますが、人間はそうはいきません。藪があれば迂回し、歩きやすいところを通っていくので離される一方です。たまに追いつくと、最後尾のボノボが「おや、まだ追いかけてきてたの?」とばかりにこちらに一瞥をくれますが、もちろん彼らはわれわれを待ってくれません。足を止めることもなく、どんどん先に進んで行ってしまいます。 そのまま、ボノボたちはマランタセ(クズウコン科の高さ2メートルにもなる巨大な草)の群生地に入り込んでしまいました。人間にとっても美味しい総菜になりますが、彼らはこの新芽が大好きなのです。でも(ボノボたちには何ともないのかもしれませんが)人間がこの密生した藪の中を進むのは骨が折れ、しかも観えないところで何時間も食べたり昼寝したり...トラッカーたちのアドバイスに従って、この日は9時頃に観察を切り上げました。 また別の日には、ゲストハウスから歩いて行ける森に、まだ人づけされていないボノボがいるということで、そちらの確認にも行きました。徒歩で30分程度のところにある森で、流石にボノボの観察はかないませんでしたが、真新しいベッドの残骸を発見! 確かにこの森にボノボのグループがいることがわかりました。同行していたMMTのキャンプマネージャーのイノサン氏も手応えを感じたようで、代表の岡安の勧めもあって、この森のボノボたちの人づけを始めるとのことでした。ゲストハウスから徒歩圏内でボノボを観察できるとなれば、ボノボ・エコツアーの魅力がさらに広がります。 今回の現地訪問では、このような今後の展開に繋がる希望も、確かに見ることが出来ました。(山口)
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![]() 今回も、前回に引き続き2月に訪問したコンゴ民主共和国の「ボノボの里」Mbali地区について、報告したいと思います。 第2弾は、現地で保全活動を行う地元NPOのMbou Mon Tour(MMT)の、ゲストハウスについてです。MMTのベースキャンプは、NPOの主要メンバーであるNkala村から約2キロ離れたところに作られています。ここは、ボノボ・グループを人の存在に慣らしてエコツーリズムを可能にする「人づけ」トラッカーやガイドチームの拠点、村人を対象に環境教育や研修を開催する会場、などさまざまな目的に使われていますが、これから盛り立てていくエコツアーのゲストハウスでもあります。 MMTの代表はNkala村出身のジャン・クリストフさんですが、その繋がりで彼の家族が場所を提供しました。ちなみに、現在のNkala村の村長さんはジャン・クリストフさんのお兄さんです。村長さんは、今回の我々の訪問をとても喜んでくれました。 冒頭のビデオをご覧いただけば分かるように、現在、MMTのゲストハウスには従来からある母屋とキッチン、それから2022年に建設された新しい宿泊棟があります。新しい宿泊棟は各部屋にトイレ、洗面台、そしてシャワーが設置されています。屋外のタンクから水を引いていますので、蛇口をひねればちゃんと水が出ます。また、ソーラーパネルとバッテリーで太陽光発電していますので、夜になれば部屋ごとに電気をつけることも出来ます。 母屋にはサロンがついていて、そこで食事をしたり談笑したりできるようになっています。また、「世界ボノボの日」に現地からお送りした第3回のイベントでもお話ししましたが、衛星通信を利用したインターネット回線が引かれています。そのため、コンゴの奥地であるにもかかわらず、スマホでメールや日本のニュースを確認したり、SNSを見られたりします。すごい時代です。 Mbali地区を訪れる旅行者からすると、デジタル・デトックスという意味では良くないかもしませんが、いざという時の連絡が容易につくという大きなメリットがあります。 ちなみに、MMTはこの衛星通信のシステムを、福祉の一環として近隣の村々にも導入し始めています。 Mbali地区の住民も、前回の報告に出てきたコンゴ河の港チュンビリまで出れば携帯電話網にアクセスできるため、スマホを所持している人は少なくありません。しかし、自分の村にまで電波が届くことは稀なケースです。このように、比較的安価な衛星通信システムが導入されることで、住民たちは地方都市や首都キンシャサなどに住む親戚と連絡が取りやすくなったと喜んでいました。 キッチンでは、MMTの調理チームが美味しいご飯を準備してくれています。22年には、UAPACAAパートナーズからの委託事業の一環として、MMTが主催で旅行者に対する接客講習会が地元の人々を集めて実施され、そこでは料理のメニューや調理法などについても検討されたそうです。 定番のニワトリの煮込みの他にも、地元の川で獲れた川魚、マカヤブという塩蔵魚や燻製魚など、バラエティ豊かで楽しめました。食事については、事前にMMT側に好みなどを伝えておくと、出来る範囲で柔軟に対応してくれそうです。今回も、日本人が来るからとわざわざキンシャサでタイ米を買って準備してくれていました。反対に、もっと地元料理を食べたい!という場合は、旬の野菜や野草を手配してくれます。今回のヒットは、野趣あふれるわらびの煮浸し!! 全体として、ゲストハウスでは非常に快適に過ごすことが出来ました。 次回は、ボノボの観察について書きたいと思います(山口)。 (つづく) ![]() 新しい年度が始まりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。山口です。 今回から3回に渡って、先日の第3回オンラインイベントの報告記事では触れなかった、2月のコンゴ民主共和国(DRC)への出張で見聞きしたことを皆さまにご報告したいと思います。 今回の出張先は、これまでにもイベントやこの一連の記事でご紹介してきた、DRC、マイ・ンドンベ州の「ボノボの里」であるMbali地区です。こちらももはやお馴染みとなってきた(?)、現地で保全活動を行っている地元NPO法人のMbou Mon Tour(ボー・モン・トゥール;MMT)とUAPACAAパートナーズが共に実施する、エコツーリズム振興プロジェクトについて現地取材をするのが目的です。 2月6日に日本を出国しパリで一泊、DRCの首都キンシャサに到着したのは7日の日没後でした。約半年ぶりのキンシャサは、相変わらず熱気に満ちあふれていました。実は、預けていたスーツケースがロストしてしまい出だしからトホホな状態だったのですが、人びとのエネルギーで少しは癒やされたように思います。 2月8日は、先着していたUAPACAA代表の岡安と合流し、MMTのキンシャサオフィスに向かいました。代表のジャン・クリストフ氏と経理・総務部長のミシェル氏に挨拶し、今回の取材に同行することになっている副代表のクロード氏、Mbali地区でのゲストハウス管理ディレクターのイノサン氏、MMTが提携しているカメラマンであるベテル氏らと打ち合わせをしました。 2月10日に、いよいよ出発です。コンゴ河のほとりにあるヨットクラブから、Mbali地区の最寄りの港町であるチュンビリに向かいます。今回利用した高速艇は、実際のエコツアーでも用いられるものです。 出港は11時過ぎでした。乗り合わせたのは日本人2名、MMT関係者3名、船員2名の計7名です。映像を見ていただければ分かりますが、ホントに早い!雄大なコンゴ河の水面を、まさに飛ぶように走り抜けていく感じです。帰路にGPSで確認したところ、下りでしたが時速70キロメートル近く出ていました。 コンゴ河は、世界第2位の流域面積を誇る大河です。その流域に広がるコンゴ盆地の熱帯林には、ゴリラやチンパンジー、そしてボノボといった稀少な類人猿を含む多種多様な固有種が生息しています。生物多様性という観点から非常に重要であると同時に、古くから人と物の移動に欠かせない、いわば中部アフリカの大動脈ともいえる役割を果たしてきました。 今回の船旅でも、住民の足であり水上版「長距離バス」であるバリニエが、頻繁に行き交っていました。映像にも出てくるバリニエは木製の大型客船で、数日間かけて河川沿いの町を往復しています。また、タグボートに押されて進む水上版「貨物列車」は、荷物の上に人びとがテントを張って生活しているため、さながら「動く町」と化しています。約10年前、初めて目にしたときには、あまりのスケールに目を疑いました。 こちらは、首都キンシャサと中東部の大都市キサンガニの間を、数ヶ月かけて往復しているものもあります。ちなみに、食料は川沿いで生活している人びとから買うそうです。船が通りかかるのを待ち構えていて、カヌーで売りに来るとか。 我々の利用したMMTのモーターボートは、キンシャサからチュンビリまでを5時間ほどで行ってしまいますし、船内には水も軽食も用意されていましたので、ご安心ください! チュンビリからは、これまたMMTの所有するランドクルーザーで移動…のはずが、ここ数日の雨で、道中の湿地帯にかかる橋が落ちかけているとのことで、バイクタクシーに乗せてもらって、MMTのゲストハウスへ向かいました。 なんだかんだで到着は夜8時になりましたが、用意されていた地元料理がとても美味しく、「あぁ、コンゴに帰ってきたなぁ」と大感激で長旅の疲れも吹き飛びました。 (つづく)
コンゴ民主共和国(DRC)のMbali地区で活動を行うNPO・ボー・モン・トゥール(Mbou Mon Tour:MMT)の代表であるジャン・クリストフ・ボキカ氏が、3月1日、2日にガボン共和国のリーブルヴィルで開催された「One Forest Summit」(*注1)に招待されました。その時の彼の演説「生物多様性はコミュニティが護る!」について、映像と記事で皆さまにご紹介します!!
オリジナルの記事は、以下のアドレスからアクセスできます。 https://pfbc-cbfp.org/actualites-partenaires/Jean-Christophe-Bokika.html ※ なお、翻訳中の丸括弧内の語句は、補足として追加したものです。
One Forest Summitで演説するボキカ氏(内容は下記の記事)
Jean Christophe Bokika、ボノボ保護における伝統的知識の認知度向上を訴える - Environews-rdc (2023年3月7日)
NGO「Mbou-Mon-Tour」の代表であるJC・ボキカは、マクロン(フランス大統領)、サス・ンゲソ(コンゴ共和国大統領)、ボンゴ(ガボン共和国)など様々な国家元首が出席する「One Forest Summit」で発言する機会を得た数少ない人物の一人である。彼の組織は1997年、ボロボ郡(マイ・ドンベ州)のンカラ村出身の、数人の大学幹部有志が語らって設立しました。この地域は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅が危惧されている、大型類人猿ボノボの生息密度が最も高い地域のひとつです。
JC・ボキカは、森とボノボに対するさまざまな脅威に直面した9つの村のコミュニティが、いかにしてコンゴ盆地初のコミュニティ森林の設立を決意し、研究とエコツーリズム推進を展開したかを説明しました。 「地域コミュニティは、森林と生物多様性の偉大な保護者です。現在、コンゴ民主共和国では、法律により地域コミュニティがコミュニティ・フォレストを設立することが認められています。環境省の最新の統計によると、生物多様性の保全に関する要望が70%以上を占めています。一部の人々が考えるように、コミュニティには(森を)破壊するという選択肢もありますが、彼らは生物多様性を保護するためにコミュニティ・フォレストを作るという選択肢を望んだのです」 そして、彼は重要な意思決定に地域コミュニティがより深く関与することについて「プロジェクトの(意思決定の)上流や実行中に地域コミュニティが関与せずに行われる保全活動は、失敗に終わると考えています。地域社会と一緒になって取り組まなければなりません」と訴えました。 また彼は、Mbaliのボノボにまつわるエピソードも紹介しました。「ボノボは、われわれにとって親戚のような存在です。昔話によれば、ボノボは人間とともに暮らしていたのですが、『借金を返す』ことができなかったので、森に逃れることを選んだのです」 そして、彼はこの機会に、世界のリーダーたちの前で、ボノボの保護において伝統的知識をよりよく認識するよう求めました。 「私は、我が国の首相がいらっしゃるこの場をお借りして、キンシャサのわずか300km北に位置しながら、ボノボを保護してきた地域の伝統文化を国家遺産として登録し、将来的には、ルンバ(*注2)と同様に、この地域の伝統文化を世界遺産として登録するよう政府がユネスコに要請することを求めます」 この嘆願は、数時間前に同じ文脈で国連教育科学文化機関(ユネスコ)のAudrey Azoulay事務局長が述べた内容と一致します。 ****翻訳ここまで****
*注1
2021年11月開催のCOP27において、ガボンのアリ・ボンゴ大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領が開催を発表した国際会議。世界の3大熱帯林(アマゾン、コンゴ盆地、東南アジア)に関わる国々の連帯を強化し、気候変動と生物多様性保全に取り組むことを目的としている。 *注2 「コンゴのルンバ」は、アフリカン・ルンバとも呼ばれ、コンゴ民主共和国やコンゴ共和国で楽しまれている。元来それらの地域で伝えられていた音楽とダンスが、奴隷貿易を経て南北アメリカ大陸へ伝播し、ジャズやキューバのルンバの誕生にも影響を与えた。その後、それらの音楽や演奏に用いられる楽器が逆輸入され、コンゴのルンバが花開く。日々の何気ない暮らしの一幕や恋愛から、植民地支配や政治不正などの重いテーマまで広くカバーするリンガラ語の歌詞からは、両コンゴの人びとの生活や価値観をうかがい知ることができる。ただし、メッセージ性の強い歌詞でも、踊れるように軽やかに歌い上げるのがコンゴのルンバの真骨頂。2021年にUNESCOの世界無形文化遺産に認定された。 各地で春一番が吹いたそうですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。UAPACAAパートナーズ・アシスタント山口は、ついに花粉の季節到来でくしゃみが止まりません。
さて、3月3日といえば一般的には楽しいひな祭りを連想される方が多いと思いますが、実は「世界野生生物の日(World Wildlife Day)」でもあります。これは、経済的・文化的に重要な野生動植物の保護の取り組みを強化するために、2013年に国連総会で決定された国際デーなんです。 そんな世界野生生物の日を迎えるにあたって、UAPACAAパートナーズではコンゴ民主共和国の熱帯林に生息する霊長類ボノボの映像を皆さんと共有したいと思います。オンライン交流会でもお馴染みになってきた(?)「ボノボの里」であるマイ・ンドンベ州のMbali地区では、ボノボを含めた野生動物の保護を目的とした地元NPOボー・モン・トゥール(Mbou Mon Tour、以下MMT)が1997年から活動をおこなってきました。UAPACAAパートナーズとしても彼らの活動に賛同し、協力をおこなっています。 この映像は、先月に代表の岡安と山口が現地を訪問した際に撮影されたものです。ボノボのクローズアップはMMTのカメラマンであるベテル・マゾノ氏が撮影・編集し、それと山口が撮影した映像・音声を組み合わせ、テロップを入れて作成しました。2月14日に現地からお送りしたオンライン交流会で参加者の皆さんにご覧に入れるはずが、通信の加減でうまくいかなかった映像の一部が使用されています。ようやく最新のボノボの映像を皆さまにお届けすることができました! 撮影場所は、Mbali地区のエコツーリズムの拠点であるNkala村の森です。Mbali地区の村々は、それぞれが自分たちの管理・利用するコミュニティフォレストを持っています。そして、そのそれぞれにボノボのグループが生息しています。住民は自分のコミュニティフォレストで木の実や林菜を採るので、ボノボも人間も同じ森を利用し、同じ森の恵みを受けて生きているといえます。 日本の暮らしの中では、野生生物との接点は限られているかもしれません。「世界野生生物の日」を機会に、稀少な野生動植物の保護と共生について、ぜひ思いを馳せてみてください。 みなさま、いかがお過ごしでしょうか?コンゴ民主共和国への出張でUAPACAAパートナーズ代表の岡安とアシスタントの私、山口は、ボノボの里であるMbali地区を訪問し、無事に帰国いたしました。
現地では、NPOのボー・モン・トゥール(Mbou Mon Tour:MMT)の宿泊施設に滞在しました。そこでは、衛星通信でインターネットが使えるようになっていました。私事で恐縮ですが、2008年からカメルーン、2011年からコンゴ民主共和国で調査を始めて以来、コンゴ盆地の熱帯林のまっただ中に通い続けてきた身としては、まさに隔世の感があります。 さて、そんな繋ぎ放題のインターネットを利用したオンライン交流会第3弾がわれわれの滞在中である2月14日に実施されました。2月14日はバレンタインデーとして世間一般では知られていますが、実は「世界ボノボの日」でもあります。ボノボを中心に据えた自然保護とエコツーリズムを目指すMMTとのイベントに、まさにうってつけの日だったと言えるでしょう! 到着からイベント当日までの数日間、代表の岡安と私はMMT基地周辺の村々への挨拶回り、そしてMMTメンバーによって人づけと観察が継続されているボノボの群れの観察に行っていました。どの村々に行っても、待っていたよ!とばかりに熱烈歓迎で、MMTの活動とエコツーリズムが人びとの強い関心を集めていることがうかがえました。また、代表の岡安は5年ぶりの訪問ということで、旧交を温めていました。 私自身は、初めて訪問した環境で大変戸惑いました。いつもの感覚では、村々は厚い森の木々に覆われ、道を歩いていても木々の隙間から空を眺めるというイメージなのですが、Mbali地区は全く異なります。広がる草原(リンガラ語でイソベといいます)とその向こうに広がる森という景観は、いつもののフィールドワークと違って、何だか開放感があります。 さて、今回のイベントでは、Mbali地区までの道中の映像と、到着以降、各村々での挨拶の様子や、森で撮影したボノボの映像を皆さんにお見せしました。私が撮影・編集したものの他に、MMTの契約しているカメラマン、ベテル・マゾノさんが撮影したものもあります。彼は、キンシャサの映像制作会社MDB Image所属のカメラマンで、映像の撮影・編集、ドローンの操作など、まさに八面六臂の活躍で、あっという間に素晴らしい映像を仕上げてくれました。森の中でボノボのクローズアップを撮影したのは彼です。 ただ、繋ぎ放題のネット回線とはいえ、流石に回線の容量が足りなかったのか、ベテルさんによる素晴らしい映像は駒落ち&低画質になってしまったようです。楽しみにしてくださった皆さまには、申し訳ありませんでした。衛星通信の弱点は悪天候に弱いことなのですが、イベントの途中から雲が広がりだし、遠くで雷が鳴り出すような状態でしたので、ますます通信速度が遅くなってしまったようです。「雨が降ったらお休みで~」を地で行く世界です。 そんな悪条件の中でも、コンゴ側ではボノボを追跡するトラッカーたちや、MMTのプロジェクトに賛同する多くの人びとが参加してくれました。画面には映り切りませんでしたが、総勢で30名近くの人びとがパソコンの前にいました。今回、日本の皆さまにご紹介することが出来たのは、その中でもほんの一部の人びとでしたが、それぞれに日本の皆さまに対する熱いメッセージを送ってくれたと思います。 さて、今回みなさまにお見せしようとした映像や写真ですが、今後、改めてYOUTUBEのUAPACAAパートナーズのチャンネルで公開することになると思います。今回お見せしようとしたものの他にも、まだまだお見せしたい映像は沢山あります。少しずつ公開していきますので、YOUTUBEチャンネルの方もお見逃しなく! みなさま、寒い日もようやく緩んできましたが、いかがお過ごしでしょうか?UAPACAAパートナーズのお手伝いをしている山口です。このたび、地球環境基金のプロジェクトの一環でコンゴ民主共和国のMbali地区を訪問することになりました。
私は、これまでカメルーンの東部州やコンゴ民主共和国の赤道州で人類学的な調査をおこなってきました。コンゴでの調査は、ボノボ研究で有名なワンバ地域で、住民の生業活動と地域産物の商品化について調査しています。ワンバ地域をはじめとするコンゴの内陸部は深い熱帯林に覆われており、交通手段が限られています。かつては、コンゴ河とその支流を利用した河川交通が盛んであり、外国籍や国営のプランテーション会社が内陸部でコーヒーやヤシ油の買い付けを行っていました。彼らは、陸上交通網を整備し商品の買い付けを行うと共に、衣類や日常雑貨などを内陸部の村々に運び込みました。しかし、90年代〜2000年代初頭まで続いた内戦の影響で、内陸部におけるプランテーション会社の活動は停止、彼らが維持していた陸上交通網と商品流通は、あっという間に荒廃してしまいました。 戦後20年を経てもなお、それらは復興していません。このため、ワンバ地域の人びとは、失われた現金収入と商品を購入する機会を求めて徒歩交易をはじめました。自分たちの地域でとれた魚やキノコ、食用のイモムシ、農作物などを背負って、森の中の道を歩き、都市部まで売りに行くのです。その距離、なんと片道200km以上で、2週間程度で往復します。このように、ワンバ地域は交通手段が非常に限られており、経済活動も難しい状況にあります。そのため、この地域の課題は、徒歩に変わる交通・流通手段の模索と、都市部で需要が高い地域産物の特定です。古くからボノボ研究が行われている地域ですが、あまりにもアクセスしにくい地域なのでエコツーリズムで地域振興というわけにもいきません。 それに対して、Mbali地区は、首都のキンシャサからは近く、交通の盛んなコンゴ河にもアクセスしやすい位置にあります。この点に関しては、これまで私が調査をおこなってきたワンバ地域とは正反対です。Mbali地区の住民がどのようにして現金収入を得ているのか、ワンバ地域との比較という点からも関心があります。 また、Mbali地区で活躍するNPOボー・モン・トゥール(Mbou Mon Tour:MMT)は、住民が主体で立ち上げ、今日まで運営している点が特徴です。ワンバ地域にも住民主体の組織がいくつもあるのですが、活動に対するモチベーションの維持が難しく、また離合集散が頻繁におこります。MMTが安定的に活動してきているとすれば、その秘訣は何なのか、どういった活動を普段から行っているのかなど、ワンバ地域の住民組織がお手本にすることが出来る点があるかもしれません。 今回、Mbali地区に滞在できるのは1週間強であり、時間は限られていますが、以上のような観点からMbali地区とMMTの活動について学ぶことが出来ればいいなと思っています。また、これまでカメルーンでもコンゴでも熱帯林の中で調査をしてきましたので、Mbali地区のような森とサバンナの境界にあたる地域に滞在するのは初めての経験です。このような自然環境の違いもどのように肌で感じられるのか、楽しみです。 それでは、コンゴに行ってきます! ツルにぶら下がって遊ぶこどものボノボ(©Mbou Mon Tour)。 この動画はMMTから提供してもらい、11月3日のオンラインイベントで紹介しました。 強烈な寒波が列島を覆っていますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。まだまだ冷え込む日は続きそうですが、それを吹き飛ばすようなイベントをUAPACAAパートナーズでは企画しております! 第2回のイベントで告知しましたように、2月には代表の岡安とアシスタントの山口がコンゴ民主共和国に渡航し、ボノボの里であるMbali地区を訪問します。現地で活躍するNPOボー・モン・トゥール(Mbou Mon Tour:MMT)のメンバーたちと会談し、エコツーリズム実施体制の進展やボノボ観察の現状を視察する予定です。また、われわれの滞在期間中には、「世界ボノボの日」も含まれています。そこで、現地から最新情報をお届けするオンラインイベントを企画いたしました! Mbaliへの旅路や、Mbaliの現在を写真や映像を交えてお伝えすると共に、これまでご紹介することが出来ていなかった、ボノボ観察のためのトラッカーたちへのインタビューなどを企画しております。Mbaliのエコツアーでメインとなるボノボ観察は、グループの移動を追跡して記録するトラッカーたち抜きには成り立ちません。エコツアーの屋台骨とも言える彼らの日々の活動をご紹介したいと思います。 なお、現地のインターネット回線の状況によっては、お聞き苦しい点や接続が安定しない場合もございます。コンゴ側の接続が切れてしまった場合は、事前に用意した映像などをご覧いただきます。長時間にわたって回線状況が復帰しない場合は、後日改めてイベントを設定し直すこともありえますことを、あらかじめご了承いただければと思います。 何しろ初めての試みですので、うまくいかなかった場合はご容赦ください。
YouTubeにアップしたイベントのアーカイブです。当日ご参加いただけなかった方は是非ご覧ください! UAPACAAパートナーズでは、1月15日(日)にコンゴ民主共和国の「ボノボの里」と繋ぐオンラインイベントを開催し、現地で活躍するNPO、Mbou Mon Tour(ボー・モン・トゥール:MMT)のメンバーを招き、約2時間にわたって現地の様子を伝えてもらいました。zoomとYouTubeライブを併用して実施いたしましたところ、それぞれ30名程度の方にリアルタイムでご視聴いただいたようです。ありがとうございました。
イベントの前半では、前回全てお見せすることが出来なかったキンシャサからMbali地区への船旅の映像から始まり、現地の人びとの生活と文化を紹介するスライドショーをご覧いただきました。MMTの代表であるボキカ氏をはじめとしたメンバーたちによる解説は、はじめはやや遠慮がちでしたが、徐々に長く詳細に、最後にはみんな競うように話し出すようになりましたね。あたかも、現地で実際にインタビューしているような臨場感があったのではないでしょうか。個人的な感想ですが、主食であるキャッサバとそのクオリティに対する人びとの自負心について話されている部分が面白かったです。俺たちのキャッサバが一番なんだ!という思いが伝わってきましたね。また、村長さんの真っ赤な装束や装身具に込められた意味や思いも興味深かったです。実は、準備していた写真の内のほんの一部しか皆さまにご紹介することが出来ませんでしたので、別の機会にまた取り上げることが出来ればと思っています。 後半は、MMT副代表のクロード氏から2022年度の活動報告がありました。2022年度から開始した地球環境基金の助成により、エコツアー復興に向けた地域住民への説明会や、ツアー実施時の対応についての講習会、土産物作成のためのワークショップ、宿泊施設の整備などが行われたとのことでした。着々と活動してくれていることが分かり、大変心強いですね!23年度の活動についても色々と要望がありましたので、MMTとUAPACAAパートナーズとが相談して進めていきます。また、最後のQ&Aのコーナーでは、多くの方々からご質問を寄せていただきました。皆さんの関心の高さが伝わってくるようで、大変励みになりました。 イベント参加後のアンケートフォームを設けておりますので、感想やご意見をお寄せください! →アンケートはこちらから さて、イベント中にも少し触れましたが、「世界ボノボの日」である2月14日に第3回目のオンライン交流会を企画しております。しかも、代表の岡安(とアシスタントの山口)が現地から参加いたします!詳細が決まりましたら、改めてご案内いたしますので、お楽しみに! 2023年もすでに10日が経ちましたが、みなさんはどのような新年を迎えられましたか。UAPACAAパートナーズでは、以前にお伝えしましたように新年早速のオンラインイベントを、明後日15日に開催いたします。 ボノボの里交流会第2弾ということで、今回の目玉となるのは、ボノボと共に暮らしてきた地域住民の生活と文化です。コンゴ民主共和国のMbali地区で活躍するNPO法人Mbou Mon Tour(ボー・モン・トゥール)の代表ボキカ氏とメンバーを招いて、現地の写真や映像をご紹介しながら解説してもらいます。日本の報道やメディアでは、コンゴの普通の農村で生活する人びとが普段は何を食べ、どんな家に住んでいるかといった生活の基本的な部分が紹介されることはあまりありません。このイベントでは、あたかもエコツアーに参加したかのように、現地の人びとの息吹を感じていただければと考えています。進行中も質問は随時受け付けていますので、気になったことは何でもZoomのチャット欄などでお伝えください! またボキカ氏からは、MMTの活動の最新動向を報告してもらいます。2023年はどういった活動に注力するのか、エコツアーに期待することなど、今後の方向性についても切り込んでお届けいたします。地域住民の生活向上とボノボの保護、そしてそれらを取り囲む自然環境の保全について、信念を持って活動されている方ですので、熱いお話が聞けるものと期待しています! そして、もちろん皆さんお待ちかねのボノボの映像もお楽しみに! ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
日時:1月15日(日)19:30 - 21:30 Zoomによるオンライン配信(上限100名様) 参加費:無料(申込締切当日16:00) ※ お申込みいただいた皆さまに、当日17:00までにZoomのリンクをお送りします。 ※ いただいた個人情報は、今回のイベントのご案内等、必要なご連絡のみに使用いたします。UAPACAAパートナーズの今後のイベント等のご案内をご希望の方は、リンク先のページの申込フォームで、最後の□にチェックを入れてください。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ プログラム 1. Mbaliへの道のり(概要と映像) 2. Mbaliの人々の暮らし(MMT) 3. ボノボの保全活動の最前線(MMT) 4. ご参加の皆さまとの交流(質疑応答) ※ 当日の通信状況で現地からの中継が難しい場合は、現地に詳しいUAPACAAパートナーズのスタッフが代わってご説明します。 |