カメルーンプロジェクト
ゴリラとチンパンジーがともに棲む、 ロベケ国立公園の稀少な森 マルミミゾウの楽園、 サンガ多国間ランドスケープの保全 |
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中部アフリカ・コンゴ盆地:大型哺乳類の宝庫
アフリカ大陸の中央部を占めるコンゴ盆地は、アフリカ大地溝帯に源を発するコンゴ河が、ゆったりと西へ流れながら多くの支流を集め、最終的にギニア湾にそそぐ広大な地域です。アマゾンに次ぐ世界第二の流域を誇るコンゴ河は、赤道直下の熱帯域を貫流し、大量の雨が降りうっそうとしたジャングルになっています。そして多種多様な動物たちが、豊かな自然の中で暮らしているのです。
コンゴ盆地に特徴的なのは、ジャングルに降り注いでいったん流れた水のうち75%~95%が、海に出る前に再び蒸発し、雲となって盆地の中へ戻っていくと考えられることです。言い換えれば、この地域の雨は“閉鎖系”といって、あまり外(特に海)からの水分の補給なしに、太古の昔から雄大な森を育ててきました。逆に言えば、もし何かの影響でこのバランスが崩れると、思いがけない水不足からどんな影響がここの生態系に及ぶかわからない、その分、脆弱な森であるとも言えます。
このような微妙なバランスの中に、約400種の哺乳類が生息していると推定され、大型の動物が多いのもこの地域の特徴です。今、急激な象牙の密猟で絶滅が心配されるようになったマルミミゾウや、ボンゴといった珍しい大型の草食獣、さらにはゴリラやチンパンジー、ボノボという私たち人間に最も近い大型の類人猿たちの、大事な棲み処となっています。
このような微妙なバランスの中に、約400種の哺乳類が生息していると推定され、大型の動物が多いのもこの地域の特徴です。今、急激な象牙の密猟で絶滅が心配されるようになったマルミミゾウや、ボンゴといった珍しい大型の草食獣、さらにはゴリラやチンパンジー、ボノボという私たち人間に最も近い大型の類人猿たちの、大事な棲み処となっています。
ゴリラと熱帯雨林の切っても切れない関係
アフリカにおける大型類人猿の分布は、ジャングルの広がりと切っても切れない縁があります。樹上生活に適応していったサルたちは、つながった森を伝って棲みかを拡大し、その過程で数多くの種に分かれていったからです。ゴリラ、チンパンジーといった大型の類人猿は、このようなサルの進化の最後に登場した仲間で、私たち人類と一番最近まで共通の祖先をもっていたと考えられます。
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マルミミゾウの楽園、サンガ多国間ランドスケープ
カメルーン南東端に位置するロベケ国立公園が、私たちの保全活動の対象です。ロベケ国立公園はサンガ多国間(Tri-National de Sangha;TNS)ランドスケープの中にあり、2012年6月に世界自然遺産に登録されました。3か国にまたがる自然遺産地域というのは初めてで、範囲こそ狭いものの豊かな熱帯雨林が残され、ゴリラやゾウの密度の高さは折り紙つきです。
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ロベケ国立公園
カメルーン最奥部に残された秘境
ロベケ国立公園は、カメルーンの中でも若い国立公園です。
1993年にWWF(世界自然保護基金)などの国際自然保護団体による初めての調査が行われ、その豊かさが知られるようになり、2001年、国立公園の仲間入りを果たしました。 ロベケはサンガ川の川沿いに大きく広がっており、水草スワンプと呼ばれる湿地帯がたくさんあります。このようなスワンプは、マルミミゾウがジャングルの中で、ミネラルを求めて掘っていた”塩舐め場”に水が溜まり、さらにゾウが掘ることで広がるという相乗効果で、長い年月をかけてできあがったと考えられています。湿地帯にはカヤツリグサが一面に覆い茂り、ゆるやかに水が流れ、ジャングルの動物たちの憩いの場となっているのです。 ...詳しくはこちら |
新しいゴリラツアーの模索
ゴリラとチンパンジーがともに棲む魅力
ロベケでは、ゴリラの人づけによる観光客の誘致を計画中です。同じTNSに含まれる、ザンガ・サンガ保護地域とヌアバレ・ンドキ国立公園で、ゴリラ・エコツアーによる集客が、ある程度成功していることを受けたものです。さらに、ロベケならではのツアーメニュー開発が検討されていますが、その一つの可能性が、ゴリラだけでなく、チンパンジーも観察できる人づけ方法の開発です。
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その候補として、公園事務所からアクセスが良いプチサバンナと、そこに至る森林内のパトロール道沿いのゴリラのグループが上がっています。このエリアはアクセスが良い反面、密猟者などの侵入もたやすいことから、ゴリラの人づけの前に、確実な監視体制を整える必要がありました。今ではプチサバンナへ入る車道の終点に、森林省のレンジャーが常駐できるキャンプが拓かれ、新たなガードポストとしてパトロールが強化されています。
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2015年9月に訪問した際には、プチサバンナまでの約6kmの遊歩道でイチジクが実る時期に当たり、ふたたび森の中でゴリラとチンパンジーが一緒にいるのを確認しました。
このときはどちらもグループだったようで、「ガ、ガ」と威嚇する声とともに、林床の下生えの中を追いかけるような音が続いていましたので、美味しいイチジクの生る木を取り合っていたのかも知れません。 ゴリラとチンパンジーの争いは、今まであまり観察されていませんが、ロベケのゴリラの人づけが本格化すれば、新しい科学的知見を加える助けになるでしょう。また観光客にとっても、このように変化に富んだ出会いを見せてくれるゴリラとチンパンジーは、他にはないエコツアーの魅力になる可能性があります。 |
ロベケ国立公園の未来
現場では2015年からの5年計画にのっとり、国立公園管理事務所長を中心に、違法行為の取り締まりのためのパトロール、TNSランドスケープ関係3か国の共同による国境警備などを進めています。また、カメルーン国内ではもっとも遠隔地にある、ロベケ国立公園の周辺コミュニティに対しても、貧困を削減する生計の向上に向けての支援を実施しています。その現金収入の道として、ゴリラを初めとした野生動物観察のエコツアーが、候補に挙がっています。
世界自然遺産に登録されてから、日本からの支援も受けて活動してきた結果 、ロベケ国立公園のゴリラは人づけできる可能性が高いことがわかりました。さらに、チンパンジーと同じ森を分け合い、時には出会いも観察できる、新しいエコツアーもできるかも知れません。
他方で、以下のような現実的な課題も見えてきました。
世界自然遺産に登録されてから、日本からの支援も受けて活動してきた結果 、ロベケ国立公園のゴリラは人づけできる可能性が高いことがわかりました。さらに、チンパンジーと同じ森を分け合い、時には出会いも観察できる、新しいエコツアーもできるかも知れません。
他方で、以下のような現実的な課題も見えてきました。
- ゴリラグループを見失っても、トレースして再発見できる能力のある人材(トラッカー)が確保できるか
- ゴリラグループ専門の担当官として、数人のレンジャーを長期間配置する体制がとれるか
- 人づけが完成するまで、観光客を人づけエリアから隔離できるか
- 密猟を確実に防げるか
UAPACAA国際保全パートナーズからの支援
他地域でのエコツアー振興支援の経験を持つUAPACAA国際保全パートナーズに対しても、国立公園やコミュニティに対する技術的なバックアップが期待されています。これらの要請を受けて、私たちもロベケ国立公園への協力を進めています。ここでは、ゴリラ・チンパンジーや野生動物の保護のみならず、多彩な専門家の協力も得て、包括的なコミュニティ開発への支援も目指しています。
2020年には新型コロナ感染症のパンデミックというまさかの危機が世界を覆い、前途に暗雲が立ち込めていますが、地元では野生動物を守る地道な努力が続けられています。現場の保全が持続できるように、活動への資金的支援も行っていきます。皆さまもぜひご協力ください!
2020年には新型コロナ感染症のパンデミックというまさかの危機が世界を覆い、前途に暗雲が立ち込めていますが、地元では野生動物を守る地道な努力が続けられています。現場の保全が持続できるように、活動への資金的支援も行っていきます。皆さまもぜひご協力ください!