3カ国にまたがる世界遺産:サンガ多国間ランドスケープ
そのカメルーンの、国の南東端に位置するロベケ国立公園が私たちの活動の対象地です。ロベケ国立公園はサンガ多国間(Tri-National de Sangha;TNS)ランドスケープの中にあり、北隣の中央アフリカ共和国のザンガ・サンガ保護地域、そしてお向かいの、東隣にあるコンゴ共和国のヌアバレ・ンドキ国立公園とともに、2012年6月に世界自然遺産に登録されました。3か国にまたがる自然遺産地域というのは初めてで、範囲こそ狭いものの豊かな熱帯雨林が残され、ゴリラやゾウの密度の高さは折り紙つきです。
TNSランドスケープは、サンガ川が3つの国の国境をなしていますが、過去の研究から、マルミミゾウなどの大型哺乳類が、川を越えて行き来していることがわかっています。ゾウはあのゴン太の足ですが、泳ぐのが得意です。コンゴ盆地の川は水量が多く、ゆったり流れているように見えて水流が早いのに、川幅50mぐらいのところは足が届かなくても平気で渡っていきます。
TNSランドスケープは、サンガ川が3つの国の国境をなしていますが、過去の研究から、マルミミゾウなどの大型哺乳類が、川を越えて行き来していることがわかっています。ゾウはあのゴン太の足ですが、泳ぐのが得意です。コンゴ盆地の川は水量が多く、ゆったり流れているように見えて水流が早いのに、川幅50mぐらいのところは足が届かなくても平気で渡っていきます。
Sangha River between Cameroon, Congo, and the CAR
マルミミゾウの受難:中央アフリカ共和国のクーデター
残念ながら北側の中央アフリカ共和国は、2013年3月に起こったクーデターのあとの混乱が後を引いて、政府の盤石な体制が取り戻せていません。その年の5月にザンガ・サンガの方まで民兵が入り込んだ時には、10頭以上のゾウがいっぺんに、難を逃れようと、ロベケの北端の町のほとりへ渡ってくるのが観られたそうです。ジェンベというロベケの南の端にある基地の周辺で、ゾウの群れに会うことも増えましたが、対岸の火を逃れて渡ってきているようです。
数年前から、チャドから中央アフリカ共和国、さらにはカメルーンの北のサバンナで、高度に組織化、武装化された密猟団が、象牙を狙ってゾウを大量虐殺するという事態が繰り返されてきました。その通り道に当たる中央アフリカ共和国で政治的に不安定な状況が続き、密猟団や違法取引の抜け穴が拡大している懸念もあります。
数年前から、チャドから中央アフリカ共和国、さらにはカメルーンの北のサバンナで、高度に組織化、武装化された密猟団が、象牙を狙ってゾウを大量虐殺するという事態が繰り返されてきました。その通り道に当たる中央アフリカ共和国で政治的に不安定な状況が続き、密猟団や違法取引の抜け穴が拡大している懸念もあります。
マルミミゾウのシェルター:ロベケ国立公園の新たな挑戦
ゾウたちはこのような混乱を避け、安心して暮らせる場所を求めて、サンガ川を渡ってきたのでしょう。2016年に発表されたWWFのレポートでは、2002年以降、ロベケ国立公園内のマルミミゾウの数が半減したというショッキングな結果が出ましたが、北側地域だけはむしろ増加していました。
その1年後には、中部アフリカ4カ国(カメルーン、コンゴ共和国、中央アフリカ共和国、ガボン)の主だった保護区の20%をカバーする、過去8年間の野生動物の動態がまとめられましたが、何とゾウの数は1/3に...ロベケは国境に挟まれた難しい立地にもかかわらず、健闘していたことがわかります。
その1年後には、中部アフリカ4カ国(カメルーン、コンゴ共和国、中央アフリカ共和国、ガボン)の主だった保護区の20%をカバーする、過去8年間の野生動物の動態がまとめられましたが、何とゾウの数は1/3に...ロベケは国境に挟まれた難しい立地にもかかわらず、健闘していたことがわかります。
2017年のレポートの図(右)を見ても、ロベケの国立公園と周辺地域は緑が濃く、他地域に比べまだまだゾウが高密度に残っています。ヌアバレ・ンドキ国立公園のデータがないのは残念ですが、多国間の世界遺産地域として協働が促進された結果、例えばクーデターのような国家の一大事が起きても、隣国の保護区がうまく緩衝材の役目を果たしていることの表れかも知れません。
これからますます、マルミミゾウを守る砦としての、ロベケ国立公園の役割は重要になるでしょう。 国境を越えて暗躍する武装密猟団と対峙するのは、ときに命を落とす危険と背中合わせの仕事です。UAPACAA国際保全パートナーズでも、残されたマルミミゾウの保護のため、WWFカメルーンと協力し、ロベケ国立公園の支援に貢献していきます。 |