コンゴ民主共和国(DRC)のMbali地区で活動を行うNPO・ボー・モン・トゥール(Mbou Mon Tour:MMT)の代表であるジャン・クリストフ・ボキカ氏が、3月1日、2日にガボン共和国のリーブルヴィルで開催された「One Forest Summit」(*注1)に招待されました。その時の彼の演説「生物多様性はコミュニティが護る!」について、映像と記事で皆さまにご紹介します!!
オリジナルの記事は、以下のアドレスからアクセスできます。 https://pfbc-cbfp.org/actualites-partenaires/Jean-Christophe-Bokika.html ※ なお、翻訳中の丸括弧内の語句は、補足として追加したものです。
One Forest Summitで演説するボキカ氏(内容は下記の記事)
Jean Christophe Bokika、ボノボ保護における伝統的知識の認知度向上を訴える - Environews-rdc (2023年3月7日)
NGO「Mbou-Mon-Tour」の代表であるJC・ボキカは、マクロン(フランス大統領)、サス・ンゲソ(コンゴ共和国大統領)、ボンゴ(ガボン共和国)など様々な国家元首が出席する「One Forest Summit」で発言する機会を得た数少ない人物の一人である。彼の組織は1997年、ボロボ郡(マイ・ドンベ州)のンカラ村出身の、数人の大学幹部有志が語らって設立しました。この地域は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅が危惧されている、大型類人猿ボノボの生息密度が最も高い地域のひとつです。
JC・ボキカは、森とボノボに対するさまざまな脅威に直面した9つの村のコミュニティが、いかにしてコンゴ盆地初のコミュニティ森林の設立を決意し、研究とエコツーリズム推進を展開したかを説明しました。 「地域コミュニティは、森林と生物多様性の偉大な保護者です。現在、コンゴ民主共和国では、法律により地域コミュニティがコミュニティ・フォレストを設立することが認められています。環境省の最新の統計によると、生物多様性の保全に関する要望が70%以上を占めています。一部の人々が考えるように、コミュニティには(森を)破壊するという選択肢もありますが、彼らは生物多様性を保護するためにコミュニティ・フォレストを作るという選択肢を望んだのです」 そして、彼は重要な意思決定に地域コミュニティがより深く関与することについて「プロジェクトの(意思決定の)上流や実行中に地域コミュニティが関与せずに行われる保全活動は、失敗に終わると考えています。地域社会と一緒になって取り組まなければなりません」と訴えました。 また彼は、Mbaliのボノボにまつわるエピソードも紹介しました。「ボノボは、われわれにとって親戚のような存在です。昔話によれば、ボノボは人間とともに暮らしていたのですが、『借金を返す』ことができなかったので、森に逃れることを選んだのです」 そして、彼はこの機会に、世界のリーダーたちの前で、ボノボの保護において伝統的知識をよりよく認識するよう求めました。 「私は、我が国の首相がいらっしゃるこの場をお借りして、キンシャサのわずか300km北に位置しながら、ボノボを保護してきた地域の伝統文化を国家遺産として登録し、将来的には、ルンバ(*注2)と同様に、この地域の伝統文化を世界遺産として登録するよう政府がユネスコに要請することを求めます」 この嘆願は、数時間前に同じ文脈で国連教育科学文化機関(ユネスコ)のAudrey Azoulay事務局長が述べた内容と一致します。 ****翻訳ここまで****
*注1
2021年11月開催のCOP27において、ガボンのアリ・ボンゴ大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領が開催を発表した国際会議。世界の3大熱帯林(アマゾン、コンゴ盆地、東南アジア)に関わる国々の連帯を強化し、気候変動と生物多様性保全に取り組むことを目的としている。 *注2 「コンゴのルンバ」は、アフリカン・ルンバとも呼ばれ、コンゴ民主共和国やコンゴ共和国で楽しまれている。元来それらの地域で伝えられていた音楽とダンスが、奴隷貿易を経て南北アメリカ大陸へ伝播し、ジャズやキューバのルンバの誕生にも影響を与えた。その後、それらの音楽や演奏に用いられる楽器が逆輸入され、コンゴのルンバが花開く。日々の何気ない暮らしの一幕や恋愛から、植民地支配や政治不正などの重いテーマまで広くカバーするリンガラ語の歌詞からは、両コンゴの人びとの生活や価値観をうかがい知ることができる。ただし、メッセージ性の強い歌詞でも、踊れるように軽やかに歌い上げるのがコンゴのルンバの真骨頂。2021年にUNESCOの世界無形文化遺産に認定された。
2 コメント
各地で春一番が吹いたそうですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。UAPACAAパートナーズ・アシスタント山口は、ついに花粉の季節到来でくしゃみが止まりません。
さて、3月3日といえば一般的には楽しいひな祭りを連想される方が多いと思いますが、実は「世界野生生物の日(World Wildlife Day)」でもあります。これは、経済的・文化的に重要な野生動植物の保護の取り組みを強化するために、2013年に国連総会で決定された国際デーなんです。 そんな世界野生生物の日を迎えるにあたって、UAPACAAパートナーズではコンゴ民主共和国の熱帯林に生息する霊長類ボノボの映像を皆さんと共有したいと思います。オンライン交流会でもお馴染みになってきた(?)「ボノボの里」であるマイ・ンドンベ州のMbali地区では、ボノボを含めた野生動物の保護を目的とした地元NPOボー・モン・トゥール(Mbou Mon Tour、以下MMT)が1997年から活動をおこなってきました。UAPACAAパートナーズとしても彼らの活動に賛同し、協力をおこなっています。 この映像は、先月に代表の岡安と山口が現地を訪問した際に撮影されたものです。ボノボのクローズアップはMMTのカメラマンであるベテル・マゾノ氏が撮影・編集し、それと山口が撮影した映像・音声を組み合わせ、テロップを入れて作成しました。2月14日に現地からお送りしたオンライン交流会で参加者の皆さんにご覧に入れるはずが、通信の加減でうまくいかなかった映像の一部が使用されています。ようやく最新のボノボの映像を皆さまにお届けすることができました! 撮影場所は、Mbali地区のエコツーリズムの拠点であるNkala村の森です。Mbali地区の村々は、それぞれが自分たちの管理・利用するコミュニティフォレストを持っています。そして、そのそれぞれにボノボのグループが生息しています。住民は自分のコミュニティフォレストで木の実や林菜を採るので、ボノボも人間も同じ森を利用し、同じ森の恵みを受けて生きているといえます。 日本の暮らしの中では、野生生物との接点は限られているかもしれません。「世界野生生物の日」を機会に、稀少な野生動植物の保護と共生について、ぜひ思いを馳せてみてください。 |