カメルーン東南部には、狩猟採集民バカが住んでいる。彼らは現在も狩猟採集生活を営んでいるが、独立後の定住化が進むまでは、固定の住居をほとんど持たずに食物を探す移動生活を、一年を通して続けていた。
狩猟採集生活と聞くと、「生死の境目で常に食べ物を取り合う弱肉強食の世界」を思い浮かべるかもしれないが、初めて彼らのキャンプを訪れたときには、そのあまりののんびり感にむしろこちらが心配になった。女性や子供はおしゃべりしたり、歌ったり、おやつを食べたり、遊んだりしながら、森で食べ物を集めてくる。他方で男性や年配の人は自宅周辺で小枝や蔓をいじり、家でゴロゴロしていることが多い。 バカの人々の所有物は非常に少ない。彼らの家財道具一式(家具・調理道具・服・狩猟道具など)合わせても一人80〜90点と、最低限のものしか所有していない。移動性の高い生活に合わせ荷物を最小に抑えているのであろうが、これは彼らの生き方と熱帯林という環境も関係している。道具や家、おもちゃが必要になったら近くに生えている葉や枝、木から自分たちで作り、使用後は自然のゴミ箱へポイである。無論、取ったところに戻すだけなので全く問題はない。狩猟採集も同様に、「必要な時に必要な分だけ」森で獲ってくる。 また、バカのコミュニティは平等社会で人間関係を大切にする。困った時はお互いに助け合うという構造が根付いている。ここでは自分のものを所有するという観念が薄く、シェアすることが当たり前に行われる。彼らには暗黙のルールがあり、狩りで獲物を仕留めた者はその肉を食べることができず、それ以外の人(家族・親戚・友人等)に分配される。獣肉に限らず、一人だけ多くの財(主に食料)を持っていることはタブーとされ、それを破る者は共同体、そして相互扶助ネットワークから除外される。 このような、平等社会と彼らの生き方「獲りすぎない」、「必要な時に必要な分だけ」は、ジャングルの正常な生態系バランスに、見事に適った暮らしに見えた。ブッシュミート交易により野生動物の乱獲が横行する現代、バカの人々の生活を見習う必要がありそうだ。 皆様の暖かいご支援お待ちしております!
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