私たちの活動現場ロベケ国立公園には多様な生態系が息づいている。そこに棲むアフリカゾウは鼻が器用で、非常に敏感な感覚(触覚、嗅覚)を持ち、アジアゾウに比べ先端に突起が二つあるのが特徴。しかし、アフリカゾウの中でも森林に生息するマルミミゾウは、急激な密猟の増加や生息地の減少によって、今まさに絶滅の窮地に立たされている。 2014年の野生生物の違法取引(IWT)会議以来、⑴ 密輸品の需要を減らす、⑵ 法整備、⑶ 執行力の強化、⑷ 地域コミュニティへのサポートの4つを中心に、国際社会は対策をスタートさせた。それから2018年の4年間に、カサネ(ボツワナ)、ハノイ(ベトナム)、ロンドン(イギリス)で進捗確認の会議が開催され、法的拘束力の強化や法整備を中心に制度改革が行われた。ゾウの生息地であるアフリカと密輸品の行き先となるアジアで自発的に会合が開かれ、独自の努力を行って来たことは注目に値する。しかし、昨秋の第二回ロンドン会議で発表された成果は、必ずしも状況改善に結びついたとは言い難かった。 その理由として、参加国の間でモチベーションに温度差があったことは否定できない。密猟・密輸に関する法律を新たに施行しても、実態が伴っていないかもしれない。ペットや薬品、楽器、装飾品など、密輸品由来が疑われる製品を欲しがるのはアジアだけでなく、先進国も含まれ、気づいていないだけで身の回りに溢れている。そう、日本も象牙に無関係とは言えない。このような背景もまた、密輸品への需要を減らす上で障害になっているのかもしれない。 とりわけ厄介な問題は、自然の中で自由に生きる動物と密猟を対象とする課題だからこそ、正確な個体数と増減を把握出来ないことだ。それゆえ、結果を数値に頼ることしかできない現代社会では、今までの努力が見えにくなっているのではないか。私たちにできることは、数字だけを追って一喜一憂するのではなく、数値化が難しい自然と野生動物の保護を、現場に寄り添って根気強く着実に続けていくことだ。皆様の暖かいご支援を心よりお待ちしております!
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