2017年12月31日、中国は国内の象牙取引を全面禁止した。それまで中国は、世界一大きな象牙市場を持ち、国内で合法的に取引が認められていた。アフリカで密猟された象牙の多くは、アジアの市場に送られると言われる。富のシンボルとして人気の高い象牙は、アジアで持続的な需要があるからだ。国際社会の圧力とはいえ、その中心地となっていた中国が象牙取引から手を引いたことは、野生動物保護・密猟撲滅にとってインパクトのある動きだ。
しかし、この法律と国民の間には、深い溝があるようだ。2018年から象牙の売買が全面禁止され、表向きは密輸品が締め出されたように見えるが、闇市場となって流通し、近隣諸国から流れ込んで来ることを防ぐのは並大抵ではないだろう。 この闇市場が生き長らえている理由には、実は日本も関係している。戦後の高度経済成長期、1980年代頃まで、日本は世界最大の象牙輸入国だった。そう、今の中国と同じように、富裕層が象牙製品を競って購入した。その後、象牙収集の熱は収まったが、当時の象牙は備蓄となって、現在も国内に残っている。 2011年〜2016年の間に日本から違法に輸出された象牙は約2,4トン(アフリカゾウ約120頭分) 、その95%が中国向けだった(WWF ジャパン調査より)。中国の国内市場が閉鎖された今、日本は合法な象牙の国内市場が残る、今や世界で唯一の先進国と言っていい。その国内市場を通じて、違法に持ち出される象牙が闇市場を潤しており、しかも日本の水際では流出を防げず、ほとんどが中国で押収されている。 このような状態が続けば、日本はアジアの新たな闇市場になりかねないが、中国同様、象牙問題に対する日本人の関心は低い。知らない間に犯罪者 にならぬよう、皆が身の周りに出まわる野生動物由来の製品を買わない/売らないことで、アジアの密輸ルートの撲滅に繋がるかもしれないことを思い出したい。
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