日本の動物園でもおなじみのアジアゾウ。 アフリカゾウに比べて人に馴れやすく、アジアの国々では古くから使役されて、農作業や林業などの現場でその力持ちぶりを発揮してきました。コロナ禍が広がる前は、観光業の興隆によって観光客を乗せて案内するゾウが人気となり、同時にその訓練の様子が動物虐待に当たると問題化するなど、良くも悪くも話題を呼びました。聖徳太子の時代から、アジアの宝物を通じてその存在を知られていたゾウ🐘 童謡で一番人気の「ゾウさん」と相まって、日本では身近な野生動物の筆頭の一つと言えるでしょう。 さて、そんなアジアゾウですが、実は野生のゾウは減り続けているのをご存じですか? 絶滅危惧種の状況をモニターする国際自然保護連盟(IUCN)の「レッドリスト」によると、インドから中国、東南アジアの広い範囲に生息する野生アジアゾウは、推定で4万頭~5万頭が残るのみと考えられています。多くの個体群が急速に発展してきたアジア諸国の経済開発で棲み処を失い、分断された狭い森やサバンナの中で生き残りをかけている状況です。 この数字は、今までUAPACAAパートナーズで中心的に扱ってきた、アフリカのマルミミゾウの問題と比べても深刻と言えます。マルミミゾウは初めてアフリカゾウを2種に分けた評価の結果、過去31年で86%が失われたとされ、レッドリストでの扱いも今年の3月にそれまでの危急種(VU)から絶滅寸前種(CR)へと、一気に2ランクもアップしてしまいました。それでも、現在の推定個体数は約10万頭(2016年のアフリカゾウ推定415,428頭の1/4)と、まだアジアゾウの倍程度は残っているとされています。 レッドリストでは、2018年段階で、世界に残されたアジアゾウのうち3万頭弱がインドに生息していると推定されています。ただ、この数字も場所による調査方法や現地住民への聞き取り方法の違いなどで正確な比較ができず、ただの予想に過ぎないという指摘もあり、広い範囲を動き回る大型野生動物の個体数推定の難しさを表しています。いずれにしても、アジアのゾウの全個体数の60%以上がインドにいることは、間違いないようです。トラの生息数も圧倒的に多いインドの自然保護の成果がうまく働けば、アジアゾウにも恩恵をもたらしてくれることでしょう。
UAPACAAパートナーズが協働するブータン南部のTraMCAは、レッドリストの地図でもわかるようにインド・アッサム州のブラマプトラ河流域と連続する、アジアゾウにとっては残り少ない広大な生息地を抱える重要地域となっています。インドではメスの集団は550~700㎢もの広範囲を利用するとの推定も出ており、トラの場合と同様、TraMCAの保護区を繋ぐ国境を越えた保全地域が守られるかどうかが、アジアゾウの生き残りにも大きなカギを握ることになりそうです。 ブータン政府は2019年~2029年のゾウ保護計画(ELEPHANT CONSERVATION ACTION PLAN FOR BHUTAN)を策定し、生息地保全や地域住民との軋轢(Human Wildlife Conflict)の解消に乗り出しました。昨年から、インターネット上で大きな注目を浴びている、中国南西部・雲南省のさまよえるゾウの群れの問題が象徴するように、各地で人口が急増するアジアで人と隣り合って暮らす野生ゾウの保護の緊急性は、待ったなしの状況まで追い込まれてきました。 UAPACAAパートナーズでも、自然保護先進国ブータンの野生ゾウ保護活動を全面的にバックアップするため、緊急支援のキャンペーンを立ち上げました。皆さまのご協力をよろしくお願いいたします! (キャンペーンは2021年9月末に終了しました。ゾウ保護プロジェクトへご支援募集中です!)
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