今日、8月12日は、10回目の世界ゾウの日です。 タイのゾウ野生復帰支援財団とともに、この日を立ち上げた野生動物映画監督Patricia Simsさんたちは、記念すべき10周年に向けて、アメリカ時間の今夜、ワークショップを開催するようです。 UAPACAAパートナーズでは、今日はブータンキャンペーン期間にちなみ、TraMCA(国境を越えたマナス保全地域)のゾウについてお届けします! ブータンは、ご存じのようにヒマラヤの山麓の国。上の写真をご覧いただいてわかるように、北は7,000m級の氷河を頂く世界の屋根から、南はインド・アッサム州との国境間近の海抜150mまで、切り立った崖と急流が続いています。ブータンの緯度は沖縄と同じぐらいですので、南部はほぼ亜熱帯の気候。夏はモンスーンで猛烈な雨が降り、そのおかげで立派なジャングルが、急峻な山肌に育っているのです。 UAPACAAパートナーズが活動支援を行っているTraMCA(国境を越えたマナス保全地域)は、こんな亜熱帯のヒマラヤ山脈のジャングルに広がる3つの保護区を東西に繋ぐ構想で、地形が険しいだけでなく森の中もうっそうと木々が生い茂り、徒歩でパトロールをするのも一大事です。ブータンの山から流れ下る何本もの川が、6月~9月の大雨季には増水して橋を流出させ、人の背を超えそうに水位の上がった川を渡るには、ゾウたちの力を借りるしかありません。密猟者や違法侵入者は季節を選びませんから、TraMCAを守るレンジャーたちにとって、ゾウたちは大切なパートナーなのです。 岡安が現地視察に訪れた時も、日本からの支援で改修されたガードポストや、エコツアー振興用の観察台までたどり着くのに、ゾウたちのお世話になりました。国立公園事務所の広場には、高さ3mぐらいのゾウに上るための階段が設えてあって、そこから背中に乗り移るので、ゾウたちは無理な姿勢で慣れない私たちがよじ登るのを待つ必要はありません。また、1日に歩かせる距離には上限があり、目的地に到着するとあとは夕方ゆっくりと周囲の草を食んで過ごし、人間の食事用に炊いたご飯もたっぷりおすそ分けをもらっていました。 こんな暮らしなら、この地域で昔から人間と一緒に暮らしてきたゾウたちにとっては、恵まれていると思っていたところ、ロイヤル・マナス国立公園のレンジャーの話では、インドから越境してきた密猟者が連れていた、使役ゾウを没収したケースも多いのだそうです。中には何十年も、ひどい暮らしを強いられた老ゾウ(推定60歳!)もおり、ロイヤル・マナスで暮らすようになってすっかり落ち着いて大人しくなり、進んで働くようになったとか。 確かに、視察の途中で出会った野生ゾウの群れは気性が荒そうでしたので、アフリカでゾウが一番怖いと身に染みている私は、近づいてくる彼らに自分が乗っているゾウが逆上したらどうしようと、冷や冷やでした。その意味でも、パトロールに適した性格の穏やかなゾウを育てる必要がありそうです。 ブータンでは、ゾウの分布は南部のインドとの国境沿いに限られますが、豊かな森とブラマプトラ河に続く水量豊富な河川が、彼らに絶好の棲み処を提供しています。写真にある野生のバナナも、実はゾウたちが食べて歩き回ってフンを落とすので、しっかり育つことができ、ほかの動物たちにも栄養価の高い食物を提供しています。まさにアフリカのジャングルで学んだ同じ森とゾウの関係が、ここでも森を育んでいました。
そして何より驚いたのは、この野生バナナが、サルでも登らないような?急峻な山肌に、帯になって生えていたこと。昔、テレビで「ゾウは身体が重くて足がなかなか上げられないから、あんなに大きいのに50センチの段差も越えられない」というのを観て、さもありなんと納得していたのに、見事に出し抜かれました。どう見てもゾウのけもの道のバナナの帯が、縦横無尽に走るヒマラヤのジャングル。世界には知らないことが溢れています。 知らないことと言えば、このTraMCAの野生ゾウの実態は、ようやく本格的な調査が始まったところです。2017年の初めての調査では、ブータン南部に分布するゾウの数は678頭。インド側と合わせても2,000頭に行かないと見積もられています。しかしTraMCA周辺でも急増する人口と広がる耕作地に押されて、人との衝突も深刻な問題になりつつあったところに、保護当局の対応が難しくなるコロナ禍が、ダブルパンチで襲い掛かりました。 絶滅の淵にあるアジアゾウの数少ない砦を守るために、ぜひ皆さまのお志をお寄せください! どうぞよろしくお願いいたします。
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