![]() 日本では勤労感謝の日に当たる11月23日、ブータンのロイヤル・マナス国立公園が、マナス多国間保護地域(TraMCAランドスケープ)で協働しているインドのマナス・トラ保護区とともに、Tiger Conservation Excellence Award(トラ保護活動最優秀賞:英語サイト)を受賞しました。この賞は2010年11月、トラの生息国13ヵ国がInternational Tiger Conservation Forumで、「次の寅年(2022年)までに個体数倍増(TX2)計画」に合意し、10年がたったことを記念して設けられたものです。 今回、受賞の対象となったブータンとインドの2カ国にまたがるTraMCAでは、両国の稀にみる緊密な協働によって大きな成果が上がり、ロイヤル・マナス国立公園で2008年の12頭から2018年には26頭に、マナス・トラ保護地域で2010年の9頭から2018年には25頭に、それぞれトラの数が増えました。 「この受賞は、ブータンにとって大きな意味を持ちます。これは国際社会で我が国の自然保護活動が顕彰されたわけで、南アジアのこの地域でブータンが重要な役割を果たせるのみならず、世界の自然保護の局面でも、サクセスストーリーを提示できたわけですから」と、ブータン・トラ・センター長(於ゲレフー)のDr. ツェリン・テンパは語りました。これが地元コミュニティやインドのカウンターパートとの協働を進める上で、大きな励みになると。 また、ロイヤル・マナス国立公園のチーフレンジャーのサムテン・ワンチャクは、この賞は献身的な内外のパートナーとの素晴らしい協働、そしてレンジャーとコミュニティのたゆまぬハードワークの賜物だと言います。「この顕彰は、私たちが長期的視野に立った自然保護のリーダーシップを発揮しうるという証です。そして10年という長いスパンでの成功は、過去の王や政府など為政者たちの、先見の明がなければ不可能でした」 「この受賞は、ブータン政府の貢献がロイヤル・マナス国立公園の効果的な管理を、国際レベルまで引き上げたことが認識されたおかげでしょう。昨年の12月3日、マナスは世界でもトラ保護管理が最高レベルにあるという、「CA|TS(トラ保護保証基準)」委員会の認定を受けました。つまり今回の受賞に相応しい保護の成果を上げていたということです」と、WWFブータンの自然保護ダイレクター、ヴィジェイ・モクタンも称賛しました。 トラなどの野生動物の保護を推進する際の基準となる指標が、この賞を受賞した保護区には設定されており、その達成を目標に各地で対策が展開されています。 受賞団体(地域)の保護活動推進資金援助を含むこの表彰は、トラ保護保証基準委員会、IUCN(国際自然保護連合)のIntegrated Tiger Habitat Conservation Programme(トラ生息地統合保全プログラム)、世界トラ会議、UNDP、Lion's Share、そしてWWFトラ保護イニシアティブによって運営されています。 2012年から、岡安が日本の皆さまのご支援をいただいて協力してきたTraMCAで、着実な成果が上がりこのような顕彰を受けることは何よりの喜びです。UAPACAAパートナーズでも引き続き、ブータンの自然保護プロジェクトに協力してまいります。
皆さまのお志を、ぜひお寄せください!
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10年前に制定されたGLOBAL TIGER DAY
日本では名古屋で第10回生物多様性条約締約国会議が開催された2010年。12年に1度巡ってくる寅年だった同年には、UAPACAA国際保全パートナーズにとっても意義深い、もう一つの国際会議がロシアで開かれました。11月に、サンクトペテルブルクにトラの生息国13カ国の代表団が集合したInternational Tiger Conservation Forumで、次の寅年(2022年)までに世界のトラの数を倍増させる、という意欲的な計画を協議したのです。ネコ科で最大の体躯を誇るトラは、20世紀初めには10万頭を超える個体がアジアに広く分布していましたが、急速な経済開発に伴い、この年には推定3200頭にまで激減してしまいました。
トラの生息数をV字回復させるべく、この会議を主導したのは当時のプーチン首相。WWFのネットワークだけでなく、世銀やアメリカ政府などの後押しがあり、1年をかけて各国から自国の包括的な活動計画を含めた世界のトラ倍増計画が提案され、資金計画を含めた具体的な協議が行われたのです。この中で明らかになった不足資金を確保するため、半年後に再度のForumを開催することとともに、7月29日の「Global Tiger Day」制定が採択されました。 ブータンからは農林大臣を筆頭とした5人の代表団が派遣され、自然保護先進国として積極的に協議に参加しました。全国に散らばる保護区の中でも、南部のインドとの国境をまたぐマナス川流域は、豊かな亜熱帯林が広がる野生動物の宝庫。TraMCAランドスケープの中央に位置するロイヤル・マナス国立公園は、トラ倍増計画の最重要拠点の一つとなり、TraMCAの目指してきた中期計画の中にも、以下の目標が掲げられています。
それから10年…
今年10回目のGlobal Tiger Dayにロイヤル・マナス国立公園から、次の寅年を待たずして目標達成の吉報が届きました!! ビデオをご覧ください。
<抄訳>
皆さんは、野生のトラのいない世界、想像がつきますか…それはほとんど、現実になりつつあります。私たちは世界のトラを、絶滅の淵まで追いつめてしまったのです。 しかし2010年、人々は行動を起こしました。各国政府、自然保護関係者、国立公園レンジャー、地域コミュニティ、皆が一緒になって野生のトラを取り戻すために…以来、 ブータンのロイヤル・マナス国立公園では、トラの生息数が倍増! ユージン・ツェリン:ジョモツァンカ野生動物保護区 「私にとってトラはエコシステムそのものです。私の夢はトラと地域コミュニティが協調の中で暮らしていくこと。いままでがそうであったように」 ネパールでは、ほぼ倍増! サビタ・マラ(野生動物学者、シニアマネージャー):WWFネパール 「今、担当している仕事は大好きです。私は野生のトラを追っていますが、過去10年で、生息数はほぼ倍増しました。保護は正しい方向に進んでいます」 そしてインドでは、トラの数は2006年から倍増しました。 バラン:TAMS(地元コミュニティ組織)メンバー 「伝統的な知恵とコミュニティの活動を活かせば、自然保護は理想的な方向へ進んでいきます」 さらに中国北東部には、かつて生息地だった場所にトラの姿が戻りつつあります。 クゥイ・シー:ドニン森林局 「私たちは何の問題もなく、トラたちと共存しています」 これはトラにとっても、人々にとってもグッドニュースです。トラが戻るということは、私たちすべての人間が生活の基盤としている、エコシステムが守られるということだからです。 まだまだ多くのトラが、生命の危機の中で暮らしているのも事実です。でも、今、私たちが力を合わせれば、彼らの咆哮を呼び戻すことができます。 |
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